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書名は記されていない。本文料紙の表に金泥、裏には銀泥で、草木、山水等を描く豪華な絵巻。奈良絵本の一つである。源氏重代の名剣の由来を述べたもので、『平家物語』の屋代本、百二十句本に付されており、覚一本などの諸本にある「剣巻」とは、内容が異なる。江戸時代には『太平記』の版本にも付載されたので、「太平記剣巻」とも呼ばれる。本絵巻の本文は、小異や脱文もあるが、冒頭に中国の故事を引いた部分を持ち、『太平記』付載のものとほぼ同様。清和源氏の祖多田満仲が二振りの剣「鬚切」「膝丸」を作らせることからはじまり、二剣が源頼朝のもとに戻るまでの経緯を述べるが、それに関連して、宇治の橋姫、一条戻り橋、土蜘蛛、三種の神器、スサノオノミコトの大蛇退治など剣をめぐる様々の説話が語られる。