- 著者
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林 衛
- 巻号頁・発行日
- pp.1-39,
自然にはたらきかけ,自然を改変しながら進化的適応をはたしてきた人間やその営みを理解するためには,はたらきかけの対象である自然環境の理解が欠かせない。自然環境の理解は,人間やその営みの限界(ポジティブな表現では到達点)や矛盾を照らし出すはたらきをもっている。地球惑星科学の探究者はしばしば,その最先端にいてそれら限界や矛盾にいちはやく気づける。社会の代表者として探究をしている科学研究者ならではの役割は,市民社会の構成員であるほかの主権者(市民)と探究の目的や成果の共有を図ることにある。しかし,地球惑星科学によって得られる知見や批判的思考力はしばしば「抑制」され,活用されず,学問が軽視あるいはねじ曲げられる状況が放置され,自然災害や原発震災の原因となってきた。「御用学者」問題発生に通ずる科学リテラシーや批判的思考力の「抑制」とその克服の道筋を,認知科学的な「共感」と理性のはたらかせ方のメタ認知から始まる人の「倫理」の視点から考察する。