- 著者
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大熊 信行
- 出版者
- 高岡高等商業學校研究會
- 雑誌
- 研究論集
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.1-15, 1942-05-30
本稿は『國家總力戦理論の基礎』と題する長篇(國防經濟學大系第一巻収載)の一節をなすものであるが、一應切りはなしても意味をもつと考へ、編輯者の勸めにしたがつて、誌上に發表する。今日、世界史の問題を、經濟的觀點からのみ解明できると信じてゐるやうな者は少いけれども、しかし一部の經濟學者は、依然として世界過程の經濟的分析から、なんらかの歸結を求めようとする習性を、脱却してゐない。しかるに大東亜共榮圏の理念は、そのやうな過程分析からは決して生れては来ず、敢てこの理念を結びつけようとすれば、その論策は『作文』のごときものと化するのである。わたくしは新らしい勉強の手はじめとして、同時代の他の精神諸科學の領域に働く人々に着目しなければならなくなつてゐる。