- 著者
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大熊 信行
- 出版者
- 高岡高等商業學校研究會
- 雑誌
- 研究論集
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.267-300, 1939-09-30
ラスキンにしたがへば、價値、富、價格などといふ經濟學上の基礎概念とともに、重要なものは生産物の概念である。しかるにこれらはいづれも一般人が理解できるやうには述べられてをらぬ。-生産物とは何であるか、ジョン・スチュアート・ミルはこの根本問題に答へんとして、矛盾に陥つてゐる。ミルは言明して經濟學は哲學的または道徳的考察と關係がないといふ,しかるにかれの推理の中にに暗黙のうちにさういふものが導入されてゐるといふのが、ラスキンの所見である。果してラスキンの所見は正當であらうか?ラスキンのミル批判は四論文『債値に従ひて』Ad Valorcmの冒頭からはじまるものであるが、われわれはまづラスキンの批評の對象となったミルの學説について、ラスキンを離れて直接に考察する必要を感ずる。問題は四段にわかれる。第一、ミルは一體何を述べてゐるか?第二、ラスキンはそれをどう理解したか?第三、ラスキンのミル批判は正當であるか?第四、ラスキン自身の思想は何であるか?