- 著者
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小原 久治
- 出版者
- 富山大学経済学部
- 雑誌
- 富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.329-388, 1987-03
小論では,国内で製造された医薬品(国産の医薬品,外国の医薬品関連企業が開発した医薬品を国内で製造したもの)や輸入医薬品が,いかなる流通チャネルの中で,特に卸売段階においてどのように流通しているかを明らかにする。この場合,戦後における医薬品卸売業者の卸業権確立の歩みを簡略に辿った上で,戦後における医薬品の卸流通の特色を明らかにし,医薬品の流通チャネルの現状を踏まえながら,医薬品の流通体制における卸薬業界の現状と動向を把握し,そこに内在する今後の問題点ないし課題を摘出することによって,医薬品の卸流通を明らかにする。卸薬業界は薬務行政と医療行政の影響を直接受け,卸薬業界や個々の卸売業者ないし卸企業を取り巻く経営環境は,一段と厳しくなってきている。この点に関する説明も医薬品の生産,小売流通,薬価設定などと並んで重要なことである。現在の医療・薬務行政は行政主導型で行われているから,医薬品の卸に深く関連する行政措置・施策と卸薬業界を含めた薬業界全体の自主的な方策や施策に触れながら,卸企業の生き残りの危機と卸経営の環境の厳しさについてまずまとめておかなければならないと考える。