著者
桂木 健次
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.141-154, 2016-07

国債の償還は,「未来世代のGDP(付加価値)」によってされているというのではなく,経済実体が消費を通して将来に向けて最終的な付加価値であるGDPを生み出すための中間消費とみなされる金融(通貨価値)の「シャドー・プライス」を意味する通貨発行益から償還させられていく。一般予算からの税収や借金(国債)を財源として歳出されている「国債費」は,定率繰入として主に償還される債券に裏書されている「付利」の支払い並びにその償還の会計運用積立に充てるためである。つまり,将来世代なる近未来が税金から負担するのは,「利払」分並びに特別会計運用経費である。
著者
伊藤 嘉規
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.471-515, 2017-03

勝馬投票券(以下,本稿では「馬券」という)の払戻金に関する所得区分については,最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決(以下,同判決で争われた事案のことを本稿では「大阪事件」という)において,「一応の基準」が示されたはずである。その基準を概略すると,「所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であり,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有する本件事実関係の下では,払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく,雑所得に当たる」。「外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有する場合,当たり馬券の購入代金の費用だけでなく,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が,当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ,本件外れ馬券の購入代金は,所得税法37条1項の必要経費にあたる」というものである。その後,同判決を受け,所得税基本通達の改正が行われ,税務当局としては,最高裁の判決の射程が当該事案と「ほぼ類似のもの」のみに及ぶようにと,インターネット,コンピュータの予想ソフト等を利用し,反復・継続的に大量かつ長期にわたって馬券を買い続けて多額の払戻金を得ていた事案に馬券の収入が雑所得とされる範囲を限定しようとした。そのため,その後,紛争が収拾する方向に向かうよりは,類似の判決において判断が分かれる状況になっている。その代表例として,東京地裁平成27年5月14日判決(以下,同判決で争われた事案のことを「札幌事件」という)が挙げられる。その事案は,6年間の馬券の購入代金が約72億円,払戻金が約78億円(約6億円のプラス)というものであり,上記大阪事件最高裁判決の判断枠組み自体は使いながら,馬券の払戻金を一時所得と判断し,外れ馬券を(必要)経費ではないと判示した。このように判決における一種の「ゆらぎ」,すなわち判断枠組みの不明確さ,不安定な状況に関して,札幌事件の控訴審である東京高裁平成28年4月21日判決を検討することで,あるべき方向性を示そうというのが本稿である。その際に馬券の収支が年間でマイナス(「馬券の払戻金額」―「馬券購入代金額」が赤字)であった東京地裁平成28年3月4日判決(以下,同判決で争われた事案のことを「麻布事件」という)も外れ馬券の購入代金の経費性の有無を論じるところで取り上げることにしたい。
著者
桂木 健次
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.141-154, 2016-07

国債の償還は,「未来世代のGDP(付加価値)」によってされているというのではなく,経済実体が消費を通して将来に向けて最終的な付加価値であるGDPを生み出すための中間消費とみなされる金融(通貨価値)の「シャドー・プライス」を意味する通貨発行益から償還させられていく。一般予算からの税収や借金(国債)を財源として歳出されている「国債費」は,定率繰入として主に償還される債券に裏書されている「付利」の支払い並びにその償還の会計運用積立に充てるためである。つまり,将来世代なる近未来が税金から負担するのは,「利払」分並びに特別会計運用経費である。
著者
神山 智美
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-106, 2017-12

身近な公職選挙の一つに地方議会議員選挙がある。2016年(昨年),筆者の居住する富山市では,不祥事(政務活動費不正利用)のため多くの地方議会議員が辞職し,その補欠選挙もなされた。補欠選挙では,多くの候補者が斬新さと自身が掲げる政策案の実現をアピールして,世間の関心も高まった経緯がある。関西ではローカル・パーティー「大阪維新の会」が,東京都議会議員選挙でも,「都民ファーストの会」が大躍進を遂げており,地方政治における政策型選挙も定着してきた。一方,「市議会議員になる方法」等というタイトルのマニュアル本も多数刊行されている。しかし,転職先として人気のある地方議会議員は,その報酬から見ても都市部であり,中山間地域等に存する小規模な町村においては,高齢化および人口減少化のなかで定員を満たす立候補者を確保することが難しくなっている実態もある。こうした現況から,地方議会の実態と地方議会議員選挙の法的性質を踏まえ,地方議会議員とりわけ市町村議会議員に係る地方自治法(自治法,昭和22(1947)年法律67号)上および公職選挙法(公選法,昭和25(1950)年法律100号)上のいくつかの論点について検討するのが,本小稿の目的である。
著者
神山 智美
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.183-208, 2015-12

原告Xは,愛知県田原市内α町(以下「本件地区」という。)において,被告Y(東京に本社を置く風力発電事業等を目的とする会社)が設置,運転する風力発電施設(以下「本件風力発電施設」という。)から350メートル離れたところに居住する住民である。本件は,Xが,同施設の風車(以下「本件風車」という。)から発生する騒音により受忍限度を超える精神的苦痛ないし生活妨害を被っているとして,Yに対し,人格権に基づき,同施設の運転差止めを求めるとともに,不法行為に基づき,上記精神的苦痛に対する慰謝料500万円の損害賠償等の支払いを求めた事案である。
著者
高山 龍太郎
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.313-366, 2002-11

本稿ではシカゴ学派社会学の諸成果を素描し, 1920年代を中心にアメリカの社会状況との関連性を考えていきたい。
著者
大坂 洋
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.603-632, 2015-03

松尾匡氏は一般読者向けの新書を含めて,極めて活発な執筆活動をしているマルクス経済学者である。本稿は,松尾匡氏とかわした議論をもとに,従来見過ごされがちであった松尾疎外論の論点を明確化し,その分析にふさわしい枠組みを提案する。
著者
中川 洋吉 清家 彰敏
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.319-344, 2000-11

20世紀は映像の世紀といわれた。また映像は政府によってマスコミュニケーションの道具として管理創造されてきた。さて,21世紀はこの映像がインターネットの場において個人,大衆に開放される世紀と考えられる。この開放される映像が創りあげる映像ビジネスは巨大な産業を形成する可能性がある。本研究は,この21世紀に創造される映像ビジネスの中核となる人材とその教育システムを問題とする。特に先進的モデルとしてフランスの映像教育をとりあげ,分析を行う。フランスには,映画学校として,我が国でも良く知られたイデック(IDHEC)があり,世界各国の映画学校の中でも,多くの著名監督を輩出したことで,その知名度は高い。第1期の卒業生に,アラン・レネ,他に,クロード・ソテ(4期),ロベール・アンリコ(7期)がおり,そして,ルイ・マルもイデック出身である。イデック同様にフランスには,国立の演劇,音楽,美術の高等専門学校が存在する。音楽,演劇はコンセルヴァトワール,美術はボ・ザールであり,映画は,映像一般専修校としてフェミス,撮影専門学校としてルイ・ルミエールがある。我が国で,国立の美術,音楽専門校として東京芸大がある。しかし,国立の映画学校は存在しない。更に,国立大学の中で,映画学部を有しているところは皆無である。フランスのフェミスは,1986年に創設された。フェミス「FEMIS」は,"Formation et Enseignement aux Metiers de I'Image et le Son "の略である。正式名称は,「視聴覚教育と人材育成」の意である。このフェミスに,1995, 99, 2000年と三回に渉り訪れ,聞き取り調査を行なった。その調査結果をベースに,フランスの映画学校(本質的には映画・映像学校)と,映像人材育成のモデルについて,考察する。
著者
田中 祥子
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.307-323, 1991-11

わが国では,1990年初より株価低迷時代に入っている。いわゆるバブルと称されている株価は,東証株価平均とNYダウの希離が大きい,1987年10月のブラック・マンデイ暴落後から1989年末の日本の史上最高株価の頃までの,PER70倍時代の株価を指す。株価の下落は,1990年2月の金利上昇,同年8月のイラクのクウェート侵攻,1991年6月の証券不祥事,8月のソ連の政変などのドキュメントがきっかけを作って回復せずに推移したが,他方では,金融自由化の要請によって導入された派生証券市場における取引が活発化してきた。現物・先物・オプション(今後先物あるいはオプションを株価指数についてものとして用いる)の三者の取引および価格形成はわが国の場合,どのように係わっているのであろうか,この点について特に取引量の多い日経平均,同先物,同オプションを中心に観察してみることにする。
著者
神山 智美
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富大経済論集 = The journal of economic studies, University of Toyama : 富山大学紀要 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-106, 2017-12

身近な公職選挙の一つに地方議会議員選挙がある。2016年(昨年),筆者の居住する富山市では,不祥事(政務活動費不正利用)のため多くの地方議会議員が辞職し,その補欠選挙もなされた。補欠選挙では,多くの候補者が斬新さと自身が掲げる政策案の実現をアピールして,世間の関心も高まった経緯がある。関西ではローカル・パーティー「大阪維新の会」が,東京都議会議員選挙でも,「都民ファーストの会」が大躍進を遂げており,地方政治における政策型選挙も定着してきた。一方,「市議会議員になる方法」等というタイトルのマニュアル本も多数刊行されている。しかし,転職先として人気のある地方議会議員は,その報酬から見ても都市部であり,中山間地域等に存する小規模な町村においては,高齢化および人口減少化のなかで定員を満たす立候補者を確保することが難しくなっている実態もある。こうした現況から,地方議会の実態と地方議会議員選挙の法的性質を踏まえ,地方議会議員とりわけ市町村議会議員に係る地方自治法(自治法,昭和22(1947)年法律67号)上および公職選挙法(公選法,昭和25(1950)年法律100号)上のいくつかの論点について検討するのが,本小稿の目的である。