著者
並木 崇浩
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.69-77, 2018-09-30

本研究の目的は、パーソン・センタード・セラピー(PCT) が抱えるいくつかの問題と批判に応じる形をとり、パーソン・センタード・セラビストの成長に必要な方策を提言することである。まず国内のPCTでは必要十分条件を絶対的に正しいと考えるあまり必要十分条件に縛られているという筆者の問題意識と、PCTとはリフレクションが受容・共感だと考える表面的な学派であるといった他学派からの批判を挙げた。そして、必要十分条件の内容自体ではなく、問題と批判が生じる背景を探ることを出発点として論考を行った。セラピストは1) 中核条件をdoingでなくbeingとして捉える、2) クライエントーセラピスト関係や自身のPCTのために自己を利用する、という二つの課題に取り組む必要があることを示した。次にbeingにおける哲学の重要性について述べ、’哲学する’ことを新たに提示した。‘哲学する’を、ひとがある問いを立て自身のことばと思考をもって意味や答えを探求する行為、と定義し、課題との関連性を論じた。最後にこれまでPCTでは‘哲学する’ ことを目的としたトレーニングがなされなかったことを指摘した。

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