著者
並木 崇浩
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.47-56, 2022-03-15

本稿はパーソン・センタード・セラピーのトレーニングに関して、なにを学ぶか、いかに学ぶか、そして学びの構造の観点から検討し、トレーニングを実践する上での論点や今後の課題について考察するものである。1)エビデンスに基づく実践の要請、2)PCTに対する批判の払拭、3)公認心理師制度の開始、の三点を根拠として、パーソン・センタード・セラピーのトレーニングが重要なテーマであることを示した。そして、学ぶ要素としてセラピストのパーソナルな成長を中心に、パーソン・センタードな学びという学び方、そして学びの構造であるエンカウンター・グループについて、関係性の視点を踏まえつつ、その基本的な特徴と重視される根拠を整理した。次に、パーソン・センタード・セラピーのトレーニングにおける論点として、1)トレーナーが提供すべきものはなにか、2)日本の心理士養成課程にパーソン・センタードの要素をいかに取り入れるか、の二点を提示し論じた。
著者
山根 倫也 並木 崇浩 白﨑 愛里 小野 真由子
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.105-115, 2021-03-15

本稿は、他者との出会いの関係における接触と知覚という観点からプレゼンスについて論じたSchmid(2002)の"Presence: Im-media-te co-experiencing and co-responding. Phenomenological, dialogical and ethical perspectives on contact and perception in person-centred therapy and beyond. を要約し、考察を加えたものである。Schmidが主張するプレゼンスとは、現在その瞬間において他者を「ひと」として知覚し、また自分自身も「ひと」として存在することである。このことは、本物であること(Authenticity)、承認(Acknowledgment)、理解(Comprehension)という中核3条件の現象学的な記述により詳細に説明されている。Cl-Th関係において、ThのプレゼンスをClが知覚することにより、Clはより促進され、Thとの相互関係が可能になる。プレゼンスに基づいたこのような関係は、パーソナルな出会いの関係と呼ばれている。また、Clとの最初の出会いがパーソナルな出会いの関係に発展する過程における内省の重要性が指摘されている。その場の体験を内省することが、新たな影響を与える体験につながるのである。そしてCl-Th関係の中で、ClとThはますます共同体験、共同内省するようになる。末尾では、パーソン・センタードのThには、「私」という自己の在り方そのものが問われることを指摘し、プレゼンスが流動的な「私」という自己の在り方という観点から捉え直される可能性について言及されている。
著者
並木 崇浩
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.69-77, 2018-09-30

本研究の目的は、パーソン・センタード・セラピー(PCT) が抱えるいくつかの問題と批判に応じる形をとり、パーソン・センタード・セラビストの成長に必要な方策を提言することである。まず国内のPCTでは必要十分条件を絶対的に正しいと考えるあまり必要十分条件に縛られているという筆者の問題意識と、PCTとはリフレクションが受容・共感だと考える表面的な学派であるといった他学派からの批判を挙げた。そして、必要十分条件の内容自体ではなく、問題と批判が生じる背景を探ることを出発点として論考を行った。セラピストは1) 中核条件をdoingでなくbeingとして捉える、2) クライエントーセラピスト関係や自身のPCTのために自己を利用する、という二つの課題に取り組む必要があることを示した。次にbeingにおける哲学の重要性について述べ、’哲学する’ことを新たに提示した。‘哲学する’を、ひとがある問いを立て自身のことばと思考をもって意味や答えを探求する行為、と定義し、課題との関連性を論じた。最後にこれまでPCTでは‘哲学する’ ことを目的としたトレーニングがなされなかったことを指摘した。
著者
白﨑 愛里 並木 崇浩 山根 倫也 小野 真由子
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.93-103, 2021-03-15

本稿は、Schmid(2001)の"Acknowledgement: The art of responding. Dialogical and Ethical Perspectives on the Challenge of Unconditional Relationships in Therapy and Beyond" の紹介とそれに基づく考察である。Schmidは無条件の肯定的関心を、対話や出会いの哲学、社会倫理の視点に基づいて「承認」として再提起した。承認とは、他者の、具体的で、特徴的な、独自のあり方に開かれることを意味する。他者とは、同一化もコントロールもできない、私とは本質的に異なる存在である。それゆえ他者を知ること(knowledge)はできない。他者の他者性を破壊せず関係を結ぶには、ただ共感し、承認すること(acknowledge)である。また理解し得ない謎を含んだ、無限の他者こそが、自己の限界を克服する。他者に出会うには、何よりもまず、他者が真に「向こう側に立っている」と理解する必要がある。反対側に立たずして出会いはない。この隔たりが、他者を、自立的な価値ある個人として尊重する。Schmidの言う承認に基づくセラピーでは、セラピストは、自身の内的照合枠を脇に置くどころか、クライエントの影響を受けて自己を問いただしながら応答することになる。これはセラピー関係の中にTh自身を投入し、Th自身が変化することであり、まさに勇気が問われる在り方といえる。またSchmidは、「(承認が重要なのは)承認が実現傾向を育てるから、というだけではない。これこそがパーソン・センタードという在り方の表れなのだ」と述べ、パーソン・センタード・アプローチの本質にも迫っている。
著者
中田 行重 小野 真由子 構 美穂 中野 紗樹 並木 崇浩 本田 孝彰 松本 理沙
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
no.6, pp.89-96, 2015-03-15

古典的クライエント中心派の論客Freire, E. による無条件の肯定的配慮についての考え(2001)を紹介し、それについての考察を行った。Freire は、セラピストが自己を出来るだけ脇に置くほどプレゼンスを提供するという彼女独自の理論を基盤に、無条件の肯定的配慮が中核条件のうち最も重要であり、共感的理解と同じであるという、古典的クライエント中心派の考え方を解説している。その他、ここに紹介する論文は2 つの事例を掲載しており、無条件の肯定的配慮を具体的に考える上で刺激となる論文である。
著者
小野 真由子 並木 崇浩 山根 倫也 中田 行重
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.65-73, 2019-03

本論文ではリフレクションについて内的統合モデル (The assimilation model) という新たなモデルから検討された Goldsmith et al. (2008) の論文を紹介し、Person-Centered Therapy(以下、PCT)にもたらした新たな知見に関して若干の考察を述べる。内的統合モデルとは、自己は多様な内なる声を持つと想定し、それぞれの声は経験の布置や在り方を象徴していると捉えている。Goldsmith et al. (2008) は、Therapist(以下、Th)のリフレクションによってThとClient(以下、Cl)の間に、そしてClの内的な声の間に理解の架け橋が構築され、Clの問題のある内的な声が統合されるプロセスにつながったと主張している。Goldsmith et al. (2008) の主張から、PCTのリフレクションのメカニズムに関して新たな知見を提供している点や、リフレクションの受容的側面の重要性を考察した。また、Clの体験が明らかにされPCTの理論が発展していく課題として、Thが技法的な関わりになってしまうことを挙げた。特集:パーソン・センタード・セラピーの展開