著者
田中 秀男
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-38, 2015-09-30

一般に、カール・ロジャーズは、ウィスコンシンでの統合失調症治療プロジェクトを経て、それまで以上にセラピストの「一致」した態度を重視するようになったと言われている。その一方、ユージン・ジェンドリンは、当プロジェクトの重要な論客であったにもかかわらず、「一致」という用語を使うことがごくまれである。本稿では、ジェンドリンが「一致」という用語にどのような間題点を感じ、解決を図ろうとしたのかを、彼の初期の主著『体験過程と意味の創造』の観点から解明する。この解決案により、フォーカシングにおける「ぴったり」という言葉を使う際に陥りがちな誤解を防ぐための留意点を提示する。
著者
田中 秀男
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.145-149, 2017-03-31

[特集]ロジャーズの中核三条件を読む
著者
並木 崇浩
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.69-77, 2018-09-30

本研究の目的は、パーソン・センタード・セラピー(PCT) が抱えるいくつかの問題と批判に応じる形をとり、パーソン・センタード・セラビストの成長に必要な方策を提言することである。まず国内のPCTでは必要十分条件を絶対的に正しいと考えるあまり必要十分条件に縛られているという筆者の問題意識と、PCTとはリフレクションが受容・共感だと考える表面的な学派であるといった他学派からの批判を挙げた。そして、必要十分条件の内容自体ではなく、問題と批判が生じる背景を探ることを出発点として論考を行った。セラピストは1) 中核条件をdoingでなくbeingとして捉える、2) クライエントーセラピスト関係や自身のPCTのために自己を利用する、という二つの課題に取り組む必要があることを示した。次にbeingにおける哲学の重要性について述べ、’哲学する’ことを新たに提示した。‘哲学する’を、ひとがある問いを立て自身のことばと思考をもって意味や答えを探求する行為、と定義し、課題との関連性を論じた。最後にこれまでPCTでは‘哲学する’ ことを目的としたトレーニングがなされなかったことを指摘した。
著者
田中 秀男
出版者
日本人間性心理学会
雑誌
人間性心理学研究 (ISSN:02894904)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.209-219, 2018-03-31

本研究では、ユージン・ジェンドリンの理論的用語「直接参照(direct reference)」の中核的意味を検討することで、“この感じ”“それ”のようにフェルトセンスの質を表さない言葉を、フェルトセンスの質を表す言葉から区別した。この区別を、『フォーカシング指向心理療法』(Gendlin, 1996)や『フォーカシング入門マニュアル』 (Cornell, 1994) の逐語記録を考察する隊に用いることで、セッションにおける短い沈黙のときにフォーカサーが主に行っている作業と、「ハンドルを見つけ、共鳴させる」作業との違いを明らかにした。この結果、フォーカサーの作業の違いに応じたリスナーのふさわしい応答を理論的に考察した。