著者
富田 英典
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.57-80, 2020-10-31

電子メディアによって電子メディアによってふたつの場所が重なっている。Paddy Scannell (1996) やShaun Moores (2004,2012, 2017) は、それをDoubling of Place と呼んだ。時間も電子メディアによって重なっている。ここでは、それをDoubling of Time と呼ぶ。本論文は、ミュージアム公式ARアプリを取り上げながらDoubling of Time の可能性について検証するものである。まず、世界中のミュージアムを対象に公式アプリの有無、アプリ機能の種類について調査を実施した。その結果、42か国のミュージアムに304の公式アプリがあることが分かった。そして、「インフォメーション」「館内マップ」「音声案内」「文字案内」「写真」などの機能が定番であり、ARやVRなどの新しい機能が登場していることが分かった。そこで、ARミュージアムアプリに焦点を合わせ、その内容を分析し4種類に分類した。次に、ミュージアムにおける歴史的価値のある展示物に対するAR利用の有効性に注目し、時間とARの関係について考察した。丸田一(2008)によれば、通信技術によって生まれるのが「同期」であり、複製技術によって生まれるのが「同位」である。この丸田の研究に依拠しながら、通信技術と複製技術、場所と時間の関係を分析する枠組みをつくった。通信技術による「同期」とは時間を共有することであり、時間の共有は同じ場所にいるような感覚を生み出す。それを本研究ではDoubling of Place と呼ぶ。これを可能にするAR技術が、その場所にはないコンテンツを重畳してくれる「場所AR」であると言える。それに対して、複製技術による「同位」とは場所を共有することであり、場所の共有は同じ時間にいるような感覚を生み出す。それを本研究ではDoubling of Time と呼ぶ。これを可能にするAR技術が、その時間にはないコンテンツを重畳してくれる「時間AR」であると言える。この枠組みからARミュージアムアプリについて分析し、Doubling of Time とDoubling of Place を同時に可能にするAR Door などのアプリが登場していることを明らかにした。

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富田 英典(2020「時間の二重化とARミュージアムアプリ」『関西大学社会学部紀要』 https://t.co/HgPKBGtrye

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