著者
中澤 信彦
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3-4, pp.173-205, 2012-03-10

本稿は、「人間の権利」をめぐるエドマンド・バークとトマス・ペインとの論争を、2つの新しい観点から考察することを試みる。1つには、バークが批判しペインが擁護に努めた人権(人間の権利)としての「生存権」、および、それによって基礎づけられている「福祉国家」の構想を、経済思想史および共和主義思想史の文脈上に位置づけたい。経済思想史研究と共和主義思想史研究は「貧困問題の解決」という論点を介して密接な関係を有していることを、近年の研究は強調しつつある。こうした関係を強く意識しながら、改めてこの有名な論争を振り返りたい。もう1つは現代的な観点である。バークとペインとの論争は、近年の議論を先取りするかのように、人間と国民(市民)、人権とシティズンシップ、現世代と未来世代、自由市場と福祉国家との緊張関係をあぶり出しており、人権という思想の偉大さと困難を見事に浮き彫りにしている。今日の日本において人権保障のあり方が直面している問題を考える際の有益なヒントが、この論争には数多く含まれているように思われる。本稿ではそのヒントをできるだけ広範に掘り起こしたい。

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