- 著者
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福井 弘教
- 出版者
- 法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
- 雑誌
- 公共政策志林 = Koukyo Seisaku Shirin : Public Policy and Social Governance (ISSN:21875790)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.321-336, 2021-03-24
自治体の収益事業には競馬,競艇,競輪,オートレースなど公営競技も該当する。公営競技事業は,自治体財政に大きく寄与する時期もあったが,それが難しい状況となっている。そうしたなか公営競技の撤退を決定する自治体が増加している。財政貢献が主たる事業目的であることからすると,当然の帰結といえるが多くの場合,撤退は唐突に発表され,結果のみが提示されて過程が不透明であることが課題である。本稿では公営競技撤退における首長判断に着目し,撤退と継続の両面から自治体の比較分析を行い,関連する政策終了論の検討も加えて,撤退判断の背景・要因を解明することを目的としている。考察の結果,それらは直接的利益や維持管理コストといった一側面を基準に撤退の決定がなされることが指摘できる。同時に議決不要などの制度や政治的事象に左右されることも散見された。すなわち,撤退判断にあたって明確な指標や基準は存在しないことが示唆された。