著者
福井 弘教
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Public policy and social governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
no.6, pp.89-103, 2018-03

ギャンブルは,正負両面共に強調されて,実際に何が課題となっていて,いかなる方策を必要とするか見えづらい点は否定できない。本稿では隣国,韓国との比較を通じて,ギャンブル政策の正負両面を明らかにしながら,日本のギャンブル政策理論を構築した上で,将来的に導入される可能性が高まった新規のギャンブル事業であるカジノの運営方式(マネジメント)から,依存症対策(ケア)に至るまでの政策提言までを射程として考察した。日本・韓国の公営競技におけるマネジメントに関しては一定の評価ができるものの,いずれも組織の肥大化を招いており,日本はケア対策の欠如も明らかとなった。宝くじ・スポーツ振興くじについては未だにギャンブルを自称せず,これら公営ギャンブルの負の側面を,「グレーゾーン」ともいえる私営ギャンブルのパチンコに強いてきたのが日本のギャンブル界である。他方,韓国では国(文化体育観光部)が主導して,ソウルオリンピックを契機とした跡地利用やスポーツ・文化行政との融合,適切な大小の規制を併用して,ギャンブル政策を運用してきたといえるが,逆に不法賭博を蔓延らせる要因ともなっており状況に応じた規制緩和も不可欠となろう。ギャンブル政策に正解はなく,常に模索を続ける必要がある。
著者
福井 弘教
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies = 大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.227-235, 2017-10-31

「ギャンブル大国」と称される日本に、カジノという新たな選択肢の付加を想定した法的枠組みが構築された。詳細については現時点では不明な点もあるが、既存の公営ギャンブルに包含される公営競技については、売上減少対策以外の検証がほとんどなされていない。公営競技場は住宅地や学校など多様な建築物、公共施設と近い場所に立地するケースが多いが、本稿では「地域資源」である公営競技を、都市空間において多様なステークホルダーとの共存をいかに構築するかという点に着目して考察した。考察の結果、既存の枠組みにとらわれない、官官連携・官民連携が多様なステークホルダー間、相互に利益をもたらすことが示唆された。
著者
福井 弘教
出版者
国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
雑誌
島嶼地域科学 (ISSN:2435757X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.19-31, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)

沖縄におけるギャンブルの機会と背景については,以下の知見を提示する。可視化できるギャンブルとしては,パチンコ,宝くじ,スポーツ振興くじのみであるが,リモート投票が進展している公営競技については相当数の会員がいることが推察される。他方,47 都道府県で唯一,公営競技や公営競技施設が未導入の背景としては,1)沖縄が占領下にあった(機会喪失),2)失業率など社会環境の特異性,3)沖縄振興策や地方交付税など沖縄への手厚い経済政策,4)米 軍基地の存在,5)琉球競馬という金銭を伴わない競馬が行われていた実績,6)住民運動に代表される市民力の高さなどが要因として考えられた。
著者
福井 弘教
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Koukyo Seisaku Shirin : Public Policy and Social Governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.321-336, 2021-03-24

自治体の収益事業には競馬,競艇,競輪,オートレースなど公営競技も該当する。公営競技事業は,自治体財政に大きく寄与する時期もあったが,それが難しい状況となっている。そうしたなか公営競技の撤退を決定する自治体が増加している。財政貢献が主たる事業目的であることからすると,当然の帰結といえるが多くの場合,撤退は唐突に発表され,結果のみが提示されて過程が不透明であることが課題である。本稿では公営競技撤退における首長判断に着目し,撤退と継続の両面から自治体の比較分析を行い,関連する政策終了論の検討も加えて,撤退判断の背景・要因を解明することを目的としている。考察の結果,それらは直接的利益や維持管理コストといった一側面を基準に撤退の決定がなされることが指摘できる。同時に議決不要などの制度や政治的事象に左右されることも散見された。すなわち,撤退判断にあたって明確な指標や基準は存在しないことが示唆された。
著者
福井 弘教
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.127-142, 2018-03-31

2015年、国連で「持続可能な開発目標,SDGs (Sustainable Development Goals) 」が採択された。これは、格差や気候変動、エネルギーなど、17の課題に対して、「誰一人取り残さない―No one will be left behind」を理念にグローバルな視点で取り組むための新たな尺度である。国によって、法制度、宗教、気候、文化など多様な差異があることから、SDGsの尺度は重要であるが、本稿で注目したのは、Goal 5 の「ジェンダー平等」である。これまで、国内においても、女性地位向上を目指した法制度や施策が展開され、近年では「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年9月4日、法律第64号)、いわゆる「女性活躍推進法」が施行されたものの、議員(国・地方)、高等教育機関における教員、企業における役員など、いずれも女性の数値・占有率は低く推移しており、女性活躍の道は未だに険しいと指摘せざるをえない。本稿では、「活躍」を生産活動として捉え、女性が「活躍」するためには、いかなる労働環境の整備や施策が必要であるのか、プロスポーツの競艇女子選手を事例としながら、ジェンダー平等に向けて、現在の不平等に至る理論の再把握、確定とパラダイムシフトを伴う施策構築を目的として展開した。考察の結果、①各組織における一定数の女性の確保、②ジェンダーに配慮した適切・適度な優遇、③フレキシブルな職場復帰環境整備を確定し、ジェンダー平等 (SDGs Goal 5) に資するソーシャルインパクト (施策) として提示する。
著者
福井 弘教
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = 公共政策志林 (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.149-163, 2017-03-24

1947年の地方自治法制定を契機として,競馬(中央・地方),競輪,オートレース,競艇という多様な公営競技が順次開始された。これらは主に地方自治体が施行者となって主催し,その収益が財政(地方・国),公益事業等に貢献してきた。具体的には,公共事業を中心に,災害復興,産業経済振興など広範囲に渡り大きな役割を担ってきたが,これはギャンブルという古くから,負のイメージの強い事象に対して,「財政貢献」,「社会貢献」,「競技関連産業振興」という正の側面を入力することにより,本来禁止されている賭博を,正当化する仕組みとなっている。公営競技の売上は高く推移して,順調に財政貢献してきたが,売上のピークは過ぎ,財政貢献はおろか,逆に一般会計からの持ち出しとなっている施行者も存在する。近年は,中央競馬・競艇を除いて存続についての議論がなされるケースが多く,廃止・撤退が相次いでいる。国策としてのギャンブル事業は公営競技以外にも,宝くじやスポーツ振興くじがあり,カジノについても将来の導入が見込める状況となり,既存の公営競技の改革は喫緊の課題である。本稿では,日本発祥の公営競技の変遷,形成過程,仕組みについて,競艇(ボートレース)を中心に概観し,現状分析を行うことにより,公営競技の政策課題を提示した。