著者
竹野 克己
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = Public policy and social governance (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.125-138, 2015-03-24

戦後日本における国土政策は,主に「全国総合開発計画(全総)」に結実されたが,その経済成長に寄与した役割は大きい。だがその本来の目的は経済成長のみならず,都市部と地域間との経済的格差を縮小し,風土や文化面,精神面の上でも,豊かな生活を目指すものであった。その意味で,この「全総」は失敗したとの評もあり,その結果,都市部と地方間の格差は一層増し,集落・コミュニティの崩壊の予兆すら現れはじめている。一般的に,国土政策の策定過程中,中央官庁の外縁部,例えば政治家のリーダーシップや学者,市民等に開かれた形で策定される機会は実際には多くなく,そのような外縁から「国土政策」を語ろうとした人物の例として,大平正芳があげられる。大平は青年期からの思想体験を,政治家となってからも自らの理想国家・社会像の中に位置づけ,政権獲得時には学者陣を動員して,国土・地域政策分野については「田園都市構想研究グループ」を立ち上げ,その成果は「田園都市国家の構想」という報告書となった。本報告書は計画論上の欠点も散見されるが,開かれつつも人々が地方で完結して生活できる都市の構想,伝統・文化への深い視点,新しい共同体像にまで目配りされた,ある種特異なものであり,今後の理想社会像,モデルとなり得る可能性を持っていた。本稿では戦後国土政策の歴史の概略を辿りつつ,大平の「同構想」の策定にあたり,重要な要素と思われる大平自身の人生上のエポック等について触れつつ,今後の国土政策上必要な要素,策定手法等を筆者なりに考察した。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

竹野克己「大平正芳内閣の「田園都市国家構想」と戦後日本の国土計画」 https://t.co/FoE1Wf20vp

収集済み URL リスト