- 著者
-
杉原 太郎
- 出版者
- ヒューマンインタフェース学会
- 雑誌
- ヒューマンインタフェース学会誌 (ISSN:13447254)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.31-42, 2013
本シリーズは、HI研究の評価において、最も基礎となる考え方についての稿である。初回は、初学者のためのリサーチデザインの導入として、実験・定量的調査・定性的調査(質的調査とも言う)の考え方、基本的なプロセスを、第2回目は定量的・定性的調査の特性、そのプロセス、各々で得られるデータの特性を、第3回は定量的調査および心理学的実験を概観した。本稿は、4回シリーズの最終回として、定性的調査の思想的基盤を説明した後に、調査的面接法と観察法を取り上げる。 HI研究では、人とのインタラクションを志向した技術開発を目指すため、人を対象にした評価を行うことが求められる。しかし、新しい技術をユーザがどのように用いるのかが、開発時にはっきりしない場合も珍しくない。特殊な状況下や、実際の現場の中での技術適用範囲を模索することもある。障害者を対象とした研究では、テイラーメイド的な技術開発になる場合もある。多様な形態の情報機器と人とのインタラクションが研究の主対象であることは、両者の関係性がダイナミックに変化する問題を扱うことを意味する。このように様々な事情で、HI分野の研究は数値でユーザあるいは技術の特性を表現する事が難しい、あるいは数値表現が不適切な場合に採用される方法が、定性的な手法である。本稿では、この手法について概説する。