著者
新山 喜嗣 NIIYAMA Yoshitsugu
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1-13, 2016-10-31

地球上に生命が誕生してから37億年になるが, 実のところその半分以上を占める20億年の間は生物の死は絶対的なものではなかった. 生物に寿命としての絶対的な死が伴うようになったのは, 生物が原核生物から真核生物に進化してからのこの17億年間のことである. この絶対的な死をもたらす要因の一つに, ヘイフリック限界の名で呼ばれる細胞分裂の回数制限がある. さらに, 生物は加齢に伴って生存に不適切な細胞が増えるが, そのような細胞はアポトーシスと呼ばれるメカニズムによって秩序正しく除去される. このように, 生物には身体の内部に積極的に死をもたらす仕組みがあるが, 一定の期間を越えて個体が生存しないことが種の存続という点では有利であることから, そのような生物種のみが現在まで地球上に残っているのかもしれない. しかし, 将来には予想外の科学技術の進歩によって,生存期間に制限がない生物種が存在しても種の存続に不都合が生じない可能性がある. もっとも, 現代の宇宙物理学が示すところでは, 生物の身体を構成する原子が宇宙に存在できるのも永遠ではない. このことからすれば, 自然科学の中で生命を捉える限り, 「永遠の生命」はあくまで相対的なものとなる.

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