著者
片山 悠樹
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告. 教育科学編 (ISSN:18845142)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.51-58, 2019-03-01

本稿の目的は、中学校教員の多忙感と子どもに対する理解との関連について、教員を対象とした調査データをもとに検討することである。近年、教員の多忙が社会的に問題視されるようになっており、政策的にもさまざまな対応策が提言されている。一方で、教師研究でも多忙問題は活発に取り上げられ、多忙の背景要因が検討されている。確かに、教員の多忙をもたらす要因にアプローチすることは重要である。しかしながら、多忙「を」招く要因に関心が集中する一方で、多忙「が」招く問題について実証的に検討した研究は必ずしも多くない。こうした認識から、本稿では教員の多忙感が教育活動にもたらす影響についての検討を試みる。具体的には、多忙感が子どもに対する理解(「子ども理解」)への不安にいかに影響するかについて検証する。また、分析に際しては、年齢を分析視点として取り上げる。教員のバーンアウトの研究の文脈では、年齢が重要な要素として取り上げられており、本稿で扱う多忙感と「子ども理解」への不安においても年齢による違いが観察されると想定するためである。分析の結果、教員の多忙感は「子ども理解」への不安を増長させる可能性があると解釈できる。しかも、そうした傾向は、30 代以降で顕著となる。こうした結果に基づき、教員の多忙「が」教育活動にどのような影響をもたらすのかを考察する。

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