著者
堀田 景子
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.75-81, 2018-03-31

部活動中の事故に関する判例は,学校事故に関する判例の中でも難解な分野を占めるとされている。本研究では,部活動中におきた熱中症の事故によって,注意義務違反(安全配慮義務違反)があったとして,「損害発生の予見可能性があるのにこれを回避する行為義務を怠った」過失,つまり,予見義務と結果回避義務のいずれかの違反があったときに過失が認定された判例を分析し,予防策や結果回避の手段を講じるための資料としたい。熱中症の発症は生徒の生命を脅かす重大な危険があるため,判例の多くは,熱中症の発症がいつかを問い,その発症を認識した時点で適切な応急処置や医療機関への搬送をするべき注意義務があったとする。そして,これらの判例は,日本体育協会から出されている熱中症ガイドブックや環境省の熱中症環境マニュアルによる熱中症の応急措置等を基準としたり,引用をしているものが多く,これらのガイドブックやマニュアルの指針に従って応急処置や救急搬送することが注意義務としては重要であるといえる。学校や顧問の対策としては,ガイドブックやマニュアルをいつでも誰もが見られるようにしておくこと,各種目の協会からのガイドラインを顧問は認識しておくこと,新しい情報や判例の判断を教職員に流せるようなシステムを作ること,一定の温度や湿度以上になったことを,顧問や部員が知覚できる体制にしておくこと,夏季は特に冷却装置(製氷器等)を常時準備しておき,いつでも誰もが使えるようにしておくことが必要だろう。

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https://t.co/wSfDMBBosn 熱中症判例からみる学校事故を考える 判例から 4考察、より抜粋 『生死を分ける時間は発症後およそ30分程度である(名古屋地裁平成19年9月26日)』

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