著者
堀田 景子
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.75-81, 2018-03-31

部活動中の事故に関する判例は,学校事故に関する判例の中でも難解な分野を占めるとされている。本研究では,部活動中におきた熱中症の事故によって,注意義務違反(安全配慮義務違反)があったとして,「損害発生の予見可能性があるのにこれを回避する行為義務を怠った」過失,つまり,予見義務と結果回避義務のいずれかの違反があったときに過失が認定された判例を分析し,予防策や結果回避の手段を講じるための資料としたい。熱中症の発症は生徒の生命を脅かす重大な危険があるため,判例の多くは,熱中症の発症がいつかを問い,その発症を認識した時点で適切な応急処置や医療機関への搬送をするべき注意義務があったとする。そして,これらの判例は,日本体育協会から出されている熱中症ガイドブックや環境省の熱中症環境マニュアルによる熱中症の応急措置等を基準としたり,引用をしているものが多く,これらのガイドブックやマニュアルの指針に従って応急処置や救急搬送することが注意義務としては重要であるといえる。学校や顧問の対策としては,ガイドブックやマニュアルをいつでも誰もが見られるようにしておくこと,各種目の協会からのガイドラインを顧問は認識しておくこと,新しい情報や判例の判断を教職員に流せるようなシステムを作ること,一定の温度や湿度以上になったことを,顧問や部員が知覚できる体制にしておくこと,夏季は特に冷却装置(製氷器等)を常時準備しておき,いつでも誰もが使えるようにしておくことが必要だろう。
著者
足立 敏
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.45-53, 2015-03-31

金属酸化膜の干渉色を理科課題研究のテーマとして生徒が研究に取り組んだ。基礎的な内容から発展させていくことができ、ユニークな教材として活用できることがわかった。身近に観察できる干渉色との関連や、現行教育課程での学習との関連も深く、探究活動のテーマとして適していることがわかった。ここでは、チタンの陽極酸化法を中心に、教材としての可能性について述べる。
著者
田中 博章
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
no.45, pp.33-42, 2018-03-31

グーグルアースの活用を通して、実際に旅行をしてあたかもその場にいるかのような疑似体験を行う。このようにICTを活用して世界旅行(授業ではワールドツアーと名付けた)を疑似体験することで社会参画し、観光における様々な課題を取り上げ、地理的思考(空間的思考)を通して現代的課題を解決する地理的知識やスキルの応用を重視する授業開発を目指した。そこで、第3次産業の世界の観光業における単元で、ワールドツアー(世界遺産をめぐる旅行)を取り上げ、教室内で世界旅行の疑似体験を通した自由な雰囲気の中で話し合い活動を進めるワールドカフェ方式を取り入れた。ワールドカフェ方式とはアニータ・ブラウンとデイピッド・アイザックスによって、1995年に開発・提唱された対話の手法である。本時においては、各国の代表者として各テーブルの地域ごとによる話し合い活動を行い、「いかにしてより満足できる観光が実現するか」「いかにして自然環境保護ができるか」単に世界遺産や空港を紹介するだけでなく、話し合いを通して課題解決を目指す。まずは最初のテーブルではあらかじめ固定した地域、アジア、オセアニアなどの地域から国を選び、航空交通網や世界遺産を調べ、「どのようにしてその国へ行くのか」「いかにしてより満足できる親光が実現するか」「いかにして自然環境保護ができるか」をテーマとする。ラウンドが変わるごとに1人を残して全員が他のテーブルにそれぞれ移動する。この方法で、ラウンドごとに別のテーブルの話し合いに参加できる。1人残った人は、ファシリテーター(司会)として移動してきた人にそのテーブルで進んだ話の内容を伝える。出された意見を書き込んでいく。このやり方を導入すると移動してきた人でもその前の話し合いでどんな内容が話されていたことが分かりやすく意見も出しやすくなる。そのラウンドの評価をCS(ポートフォリオ)分析9にて行う。最後は全体で情報を共有する。CS分析とは、CSポートフォリオ分析とも言い、項目別満足度と総合満足度から、重点改善領域を抽出する分析手法である。満足度を構成する要素ごとの「満足度jを縦軸、総合満足度と要素ごとの相関係数(関係の強さ)を横軸にとり、各要素をプロットして重点的に改善する要素を明らかにする。
著者
加藤 眞太朗
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
no.42, pp.85-93, 2015-03-31

本校では平成24年度より電子型タブレット(iPad)を生徒二人に一台の割合で導入し、授業実践を行っている。その中で、新たに試みた授業実践とともに、継続した活用の中で生じてきた課題である、データの保存方法や各端末間のデータ共有に関する実践例を紹介させていただく。しかし、継続した活用をすればするほど、データ量の増加や個人情報の管理等に対して、どのように対応していくかが大きな課題になってくる。また、過去に作成したものを生徒や指導者がいかに振り返りしやすくするか等の継続的活用の問題や、ICTのメンテナンス等の技術的問題も存在するが、同時にノートとの併用の仕方や、ノートの取り方そのものについても考えていく必要性があるのではないかと思われる。
著者
酒井 類 田中 博章 財田 由紀 小田原 健一 伊吹 憲治
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-12, 2017-03-31

科目「現代社会」では、経済の項目において雇用・労働問題を取り扱うことになっている。しかし、高校生の多くは労働者としての経験がなく、そのためリアリティをもった授業を行うのが難しい現状にある。当該項目において教科書には多くの用語がゴシック体で並ぶが、授業展開はそれを追いかけることに汲々としていたのではないか、そんな問題意識があった。たしかに「労働基準法」という用語を知ることは大切だが、それだけで充分とは言えないであろう。今回の研究授業では、題材としてブラックバイト取り上げた。近い将来多くの生徒が関わるであろうアルバイトゆえ、興味・関心も高いと判断したからである。一方で知識のない学生は、問題に直面した際に、自分の経験で対処しているのが現状である。この状況を鑑みるに、高等学校で労働教育を行う意義は充分にあると考えた。もちろん、いずれ直面する就職の際にも、ここで学んだことは何らかの形で手がかりとなるであろう。本校における労働教育についての現状を報告したい。
著者
増田 朋美 青山 和宏 森永 敦樹 山本 武寿 天羽 康
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.53-67, 2016-03-31

現在、「データの分析」は、知識の伝達だけに偏らず、学ぶことと社会とのつながりをより意識した指導が期待されている。一方、高等学校教育課程としては約40年ぶりに導入された本単元には、現場からの戸惑いの声も多く、まだまだ課題が山積している。そこで本研究では、基礎的な知識・技能の習得することとともに実社会や実生活の中でいきる統計的思考力を育成することを目標に、テクノロジー活用を前提とした多変数のデータセットからなる教材を開発し、実践した。本教材を生徒たちがどう学習したか、その様相を明らかにすることを通して、「学ぶ統計」から「使う統計」へ、学習の転換を提案したい。