著者
出口 正之 Masayuki Deguchi
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.299-335, 2014-03-25

日本の非営利組織(NPO)の法制的な整備は1898 年の民法の施行に始まる。100 年後の1998 年に特定非営利活動促進法が施行された後,「NPO」という用語が広がったため,日本における非営利組織は比較的新しいものという主張が広まり,日本の伝統的組織との連続性が必ずしもしっかりと認識されてこなかった。それに対して,今田忠は江戸時代設立した講で現存する講があることから,講は日本のNPO の1 つのルーツであると主張した。 本稿では明治民法成立前の時点での「講」の特性と,現代の非営利組織の特性とを比較した。感恩講と一新講という明治民法施行前から存在していた2 つ講を事例に取り上げ,目的,運営,ガバナンスなどを検討した。感恩講は,財産を維持し,理事会に相当する意思決定機関を有して,現代の財団の特性と共通する。また,一新講は社員に相当する講員を有し,社員総会による意思決定を行っていた。両講ともに,明治民法施行前時点ですでに現代的な意味での非営利組織としての特性を有していたことが明らかになり,今田説を強く支持することとなった。

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