著者
大塚 宜明
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities
巻号頁・発行日
no.107, pp.63-108, 2020-02-25

本論では,先史時代を特徴づける資源の一つである黒耀石のうち,置戸産黒耀石に注目し,道内全域の黒耀石原産地推定分析結果を集成し通時的に検討することで,北海道における当該黒耀石の利用の変遷およびその歴史的意義について考察する。 検討の結果,(1) 置戸産黒耀石は旧石器時代からアイヌ文化期(中世)まで通時的に利用されるものの,旧石器時代では利用範囲は限定的であり,縄文時代において道内全域で確認され広域化した後,続縄文時代では利用範囲が限定化され,擦文時代・オホーツク文化以降はその利用範囲が大きく縮小し点在化すること,(2) 旧石器時代・縄文時代・続縄文時代では狩猟具・加工具に用いられるのに対し,擦文時代・オホーツク文化においては利器としての利用方法の限定化,擦文時代とアイヌ文化期の間に黒耀石の非利器化という,黒耀石の利用方法の大きな画期が存在することを明らかにした。 これらの変化が生じた期間は,北海道における鉄器の流入と鉄器化の完了と対応することから,アイヌ文化期に特徴的にみとめられる黒耀石円礫の存在は,黒耀石が利器の原料としての役割を鉄器に譲っていく過程で,利器の原料から非実用的な儀器(副葬品)へと転化されていく,黒耀石を取りまく先史人類社会の変動を示していることが明らかになった。

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置戸産黒耀石の利用からみた人類活動の変遷─北海道を対象に─ | 札幌学院大学学術機関リポジトリ https://t.co/hB19OdXXOL

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