著者
奥谷 浩一
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.99, pp.77-110, 2016-02-01

ハイデガーが第二次世界大戦後に公刊した『ヒューマニズム書簡』は,小著でありながらきわめて重要な意味をもつ著作である。この書のなかで初めて彼自身の前期から後期への思想の「転回」が語られ,その後の後期思想のアウトラインが示されているからである。そして,これまでの西洋の伝統的な思想とその基調であったヒューマニズムを批判して,反ヒューマニズムの立場を公言する彼の議論は,彼がナチに所属していた時代との関わりにおいてもさまざまな議論を呼んでいるからである。本稿では,この小著が内包するさまざまな問題群のうちから,彼のヒューマニズム論に焦点を絞り,ハイデガーのヒューマニズム批判が意図するところを解明すると共に,1930年代からこの小著に至るまでの過程で彼の反ヒューマニズム的な立場がどのように進展してきたかを解明する。その結論として,彼の思想の展開過程のなかでは,存在,存在と人間との関わり,存在への接近の仕方などの点で思想の「転回」を示しているにも拘わらず,反ヒューマニズム論的な立場にはほとんど変化がないこと,彼が第二次世界大戦の結果としてのナチズムに対する歴史的審判の後にも強固に反ヒューマニズムの立場を維持し続けたこと,そしてこれらのことと彼のナチズムへの関与とが内的に深く,また強く通底していることが示されるであろう。

言及状況

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@BeTakada アニマ=アニマルでは動物論だが、そうした否定神学=ヒューマニズムは、単にハイデガーを無神論と決めつけるときに起こってしまう。ハイデガーは神待望する純粋持続、マルクス的物神論の時間性、フェティシズムを語っていない、というわけですね。https://t.co/oOTNwLRbgj https://t.co/pP1UiwdxQt

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