著者
石田 頼房
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.42, pp.121-149, 1991-03-30

エベネザー・ハワードが1898年にその著書『明日』(後に『明日の田園都市』)で発表した田園都市論は,単なる理想都市論ではなく,極めて実現性の高い計画論であった。しかし,発表当初はハワードの理論も「空想的」とみなされていた。それを空想ではないと感じさせたのが,ボーンヴィルやポート・サンライトなどの既に実現しつつあった工業村だった。もともと,ハワードの田園都市論は19世紀を通じてイギリスでみられた工業村などの試みや,土地公有化論を基礎に考えられたものである。さらに,ボーンヴィルのカドベリーやポート・サンライトのレヴァーなどの,工業村の創始者である工業主はレッチワース田園都市を建設した第一田園都市株式会社の有力出資者でもあった。いわば,田園都市論も田園都市も工業村をぬきにしては語れないのである。しかし日本では,工業村については断片的な紹介しかされていない。この報告では,19世紀イギリスの工業村の内でも最も著名なソルテア,ポート・サンライト,ボーンヴィルの三事例を取り上げ,その計画と建設の歴史,その後の変化,現状について述べる。

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