- 著者
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石田 頼房
- 出版者
- 東京都立大学都市研究センター
- 雑誌
- 総合都市研究 (ISSN:03863506)
- 巻号頁・発行日
- no.58, pp.123-144, 1996
これは、1995年3月18日に行なわれた著者の東京都立大学大学院都市科学研究科における最終講義の記録である。当日の講義は、あらかじめ講演内容と経歴・著作目録を記したパンフレットを配布し、そのパンフレットに載せた原稿どおりに講演したので、それを、ほとんどそのまま再録した。再録するにあたって、注と英文梗概をつけ加えた。この講義の題目にある2019年は、いうまでもなく日本に初めて都市計画法が制定された1919年からちょうど百年という年である。そして現在からおよそ四半世紀という年でもある。都市計画の長期展望として、その時期までに可能な望ましい目標像を掲げ、いかにすればそこに到達できるかを、段階計画を含めて考えてみようというのがこの講演の試みであった。「2019年への都市計画史」という表題の意味するところは、上記の試みが成功するならば、それはとりもなおさず、2019年という日本都市計画にとって記念すべき年に書かれるであろうところの都市計画史を現時点で述べることに他ならないという認識に基づいている。日本及びそれをとりまく世界の、経済状況・政治情勢がきわめて不安定で、明らかに転換期であり、人々の意識にも変化が見えているだけに、これはやや無謀な試みであるが、最近の都市計画界に長期展望が不足しており、そのことが現実の課題への対処も視野の狭いものにしていると考えられるので、あえてこのような議論をしてみた。また逆に、転換期であるだけに、このような将来予測をあえてして、そこに到るプロセスを考えるというのも一つの方法であると考えたのである。また、これは、『総合都市研究』50号(1994)に発表した「都市農村計画における計画の概念と計画論的研究」とつながりのある問題提起を目指したものでもあった。しかし、これはやはり困難な課題であって、結局、2019年への都市計画史の内容は、2019年への段階的展望を、簡略化された「年代図表」の形で示したにとどまったが、それでも一定の意義はあるものと考える。