著者
川上 和人 鈴木 創 堀越 和夫 川口 大朗
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究 = Ogasawara research (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
no.44, pp.217-250, 2018-07

南硫黄島の鳥類相の現状を明らかにするため、2017年6月14日~27日の期間に現地で調査を行った。その結果、過去に繁殖が確認されていた各種鳥類の生息が確認され、いずれの種についても特に大きな個体数の変動はないものと考えられた。ただし、コルと山頂の間では過去10年で高茎草本を中心とした密度の高いブッシュが発達しており、このような場所ではミズナギドリ科、ウミツバメ科の営巣が減少していた。セグロミズナギドリ Puffinus bannermaniは2007年の調査では山頂付近でのみ確認されていたが、今回の調査から標高300mの崩落地内の岩石地でも営巣していると考えられた。山頂周辺ではオーストンウミツバメ Oceanodroma tristramiの巣立ち前後の雛や成鳥が見つかり、南硫黄島における初めての繁殖の証拠となった。海鳥の営巣は、海岸部では植生が沿岸部に認められる場所において、山上部では森林が発達した場所で密度が高い傾向があった。UAVによる調査で南部の海岸に面した崖上ではアカアシカツオドリ Sula sulaの集団繁殖地が国内で初めて確認された。同じくUAVによる調査で北部の崖上のモクビャクコウ Crossostephium chinense群落において地上に下りている複数のクロアジサシ Anous stolidusが確認された。ここでは証拠は得られなかったものの営巣している可能性があると考えられた。アナドリ Bulweria bulwerii、カツオドリ Sula leucogaster、アカオネッタイチョウ Phaethon rubricaudaでは、羽毛にシンクリノイガ Cenchrus echinatus及びナハカノコソウ Boerhavia diffusaの果実を付着させた個体が見られ、これらの海鳥が種子散布者となっていることが示唆された。

言及状況

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写真は2017年9月の硫黄島クルーズで撮影したものです。 2017年6月に行われた素晴らしい南硫黄島の調査結果(鳥類相)はこちら

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