- 著者
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宗像 冬馬
- 出版者
- 首都大学東京・都立大学社会学研究会
- 雑誌
- 社会学論考
- 巻号頁・発行日
- vol.40, pp.1-20, 2019-12-10
本稿は後期Wittgenstein思想の社会学的意義の再検討を試み,その中で自然主義解釈の社会学理論的展開の可能性を探る.そして自然主義と分析社会学を結びつけることを提案する.後期Wittgensteinの社会学的利用は,言語ゲーム概念と規則をめぐる諸考察に集中している.そこからいかなる理論や方法に繋げるかによって整理すると,大別して(1)論理文法分析・概念分析の方法,(2)意味のシステム論,(3)言語ゲーム論,(4)コミュニケーションと他者の理論,(5)実践と再生産の理論,(6)自然主義の6 つがある.そこには共通する論点がある.第一に,実践と規則の相互関係が基礎となる.第二に,実践が依存するコンテクストは多元的で複雑である.第三に,慣習的実践や規則の研究では意味と自然の領域が区別される.これらを基礎としつつ,実践/規則,理論/方法,意味/自然の区別のどこに着目するかで立場が分かれる.中でも,最も曖昧だが特異な視座を有する自然主義は,記述/説明の区別を導入すれば,説明を志向するものと見なせる.そして自然主義の社会学的位置づけの明確化とさらなる豊饒化の手段として分析社会学の視点が有望である.自然的・因果的メカニズムを説明する試みとして,後期Wittgensteinの自然主義と分析社会学は手を取り合える.