- 著者
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駒木 伸比古
- 出版者
- 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
- 雑誌
- 観光科学研究 (ISSN:18824498)
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.29-38, 2011-03-30
本研究は,大店法末期において地方都市郊外に計画されたショッピングセンターを事例として,大型店問題を出店者である企業の経営状況や事業主体である地元自治体,そして地元小売業者といった主体の多面的な利害を踏まえつつ検討した。対象としたのは,大店法に基づき出店の届出が行われたが出店調整の勧告を機に計画が撤回されたのち,ほぼ同規模・同機能のショッピングセンターの出店届出が大店立地法に基づき異なる企業により行われ,出店したケースである。それぞれの出店計画および調整の過程における企業の経営状況,自治体の対応,そして地元小売業者の反応を検討し,法規制の緩和も含め,各主体がどのような利害関係に基づき行動したかを比較・考察した。その結果,①土地区画整理事業に関連する大型店の誘致・出店をめぐる自治体の対応,②出店者の経営状況とそれに関連する法的手続きの利用,③大型店を誘致せねばならない自治体とドミナントエリア拡大をめざす出店者との利害の一致,④大店法の廃止・大店立地法の施行に伴う地元小売業者の大型店出店調整に対する認識の刷新,⑤中心市街地を有する自治体と郊外自治体とでのショッピングセンター出店に対する意識の違いの5点が,本事例の出店プロセスに大きく関わっていることが明らかとなった。