著者
箸本 健二 武者 忠彦 菊池 慶之 久木元 美琴 駒木 伸比古 佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-47, 2021 (Released:2021-03-02)
参考文献数
21

本稿は,立地適正化計画の実施主体となる332市町村へのアンケート調査を通じて,立地適正化計画の導入意図,施策の概要,実施上の課題を分析・検討した.その結果,多くの地方自治体が,政策の理念や必要性には理解を示している一方で,主に経済的理由から都市機能の誘導は限定的な施策にとどまる.また,ローカルな政治的文脈への配慮から,都市機能の集約化や強制力を伴う居住誘導の導入にも慎重な姿勢を崩していない.立地適正化計画をコンパクトシティ実現の切り札と位置づける国と,さまざまな制約条件の下で実施可能な事業を優先せざるを得ない地方自治体との温度差は,現時点では大きいといわざるを得ない.
著者
岩間 信之 浅川 達人 田中 耕市 駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.70-84, 2016 (Released:2016-06-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,住民の買い物利便性(食料品アクセス)および家族・地域住民との繋がり(いわゆるソーシャル・キャピタル)を基にフードデザート(以下FDs)を析出するとともに,FDsの特徴を地理学的視点から明らかにすることにある.研究対象地域は,関東地方の県庁所在都市A市の都心部である.分析の結果,低栄養のリスクが高い高齢者は,全体の49%に達した.地区別にみると,都心部のなかでも市街地中心部と市街地外縁の一部において,低栄養高齢者の集住がみられた.なかでも,市街地中心部において食生活の悪化が顕著であった.市街地中心部ではソーシャル・キャピタルの著しい低下,市街地外縁では食料品アクセスとソーシャル・キャピタルの相対的な低さが,高齢者の食生活を阻害する主要因であると考えられる.従来,FDs問題研究では買い物先空白地域に注目が集ってきた.しかし本研究から,ソーシャル・キャピタルが希薄な大都市中心部でも,FDsが存在することが明らかとなった.
著者
駒木 伸比古 佐藤 正之 村山 徹 森田 実 小川 勇樹
出版者
[三遠南信地域連携研究センター]
巻号頁・発行日
2017-09-30

本図説を作成するにあたり,以下の助成金を利用しました。・文部科学省「共同利用・共同研究拠点(越境地域政策研究拠点)」(代表者:戸田敏行)・日本学術振興会科学研究費「ポストまちづくり三法時代における大規模集客施設の越境地域政策に関する地理学的研究」(代表者:駒木伸比古)・日本学術振興会科学研究費「民主主義の規模と行政の自律的裁量」(分担者:村山徹)
著者
駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.154-163, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
参考文献数
23

2015年12月に「平成26年商業統計調査」の結果が公表されたことで,2008年11月に「平成19年商業統計調査」の結果が公表されて以来,ほぼ7年ぶりに日本における商業動向を把握することが可能となった.この背景には,2012年の経済センサスの設立および実施が挙げられる.本稿では,経済センサス実施にともなう商業統計における調査方法および項目の変化とその利用について解説することを目的とした.実態に応じた調査が実施されたことで,最近の商業・流通業の動向に応じた分析や状況把握が可能となった.ただし調査対象および方法が変更されたため,時系列変化を検討する際には十分な注意が必要である.
著者
浅川 達人 岩間 信之 田中 耕市 佐々木 緑 駒木 伸比古 池田 真志 今井 具子
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.21-34, 2019 (Released:2019-09-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The purpose of this study is to analyze, based on evidence, factors preventing the elderly from maintaining a healthy diet by using a revised food access indicator that takes food availability in stores into account. The area being studied is A City, a regional city in the northern Kanto region of Japan. The dependent variable in the study was dietary diversity score, which is a measure of the risk of adverse health effect caused by deterioration of diet. Multilevel analysis was used for the analysis of factors to allow individual level factors and group level factors to be analyzed independently.Regarding the individual level factors, results of the analysis suggest that FDs problems are present in areas with reduced food access, reduced social capital, or both, which supports the previous finding of FDs study groups. Among the group level factors, the presence of a store within a close distance of 500m most strongly affected the diet of the elderly. However, when a supermarket with nearly 100% food availability was located about 400m away or further, the condition for raising dietary diversity score from low to high was not met. In contrast, when the data was analyzed by assuming the shopping range to be 2km each way, the availability of a store as fully stocked as a supermarket within about 1.3km met the condition for raising dietary diversity score from low to high.
著者
駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.127-139, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
23

本稿は,マイクロジオデータである「商業集積統計」を用いて,中心市街地活性化計画認定都市の基本計画区域内における商業・サービス業の集積状況を業種に基づき分析・検討したものである.その結果,人口規模の小さな自治体ほど,基本計画区域内への商業・サービス業の集積が高まる傾向にあることが明らかとなった.また業種によってその集積状況は異なっており,高次の業種は集積する一方で,日常的に利用される業種の集積は低かった.さらに,基本計画区域内での業種構成は地域性がみられてグループ化が可能であること,自治体の人口規模とも関連していること,そして地理的分布にも特徴がみられることが明らかとなった.
著者
駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.192-207, 2010-03-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
4 2

本研究は,徳島都市圏における大型店の立地展開とその地域的影響が,出店規制に基づきどのように変化してきたかを明らかにした.徳島都市圏では,大店法の施行から現在に至るまで,大型店の出店に対する規制はそれほど厳しく行われてこなかった.そのため,大店法が強化された1980年代に,県外資本によって大型店の出店が進んだ.大型店の郊外化・大型化は,大店法が緩和された1990年代ではなく,大店立地法が施行された2000年以降に顕在化した.これらの結果は,大店法の施行期間において出店調整に対して行政の関与があったために独自規制や出店拒否が行われず,大店立地法の施行以降も新たな制度に基づく規制の実施に消極的であるという徳島都市圏における出店規制の実態から説明される.加えて,出店規制は,商業集積や消費者買物行動に対しても,間接的に影響を及ぼしてきたことが確認できた.
著者
岩間 信之 佐々木 緑 田中 耕市 駒木 伸比古 浅川 達人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.178-196, 2012-12-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

本稿の目的は,被災地における食品流通の復興プロセスを明らかにするとともに,仮設住宅入居後における買い物環境の変化と食品供給問題改善のための課題を整理することにある.研究対象地域は岩手県下閉伊郡山田町である.東日本大震災により,山田町の市街地は壊滅的な打撃を受けた.震災発生当初,被災者は深刻な食糧難に見舞われた.現在,商業施設の復興はある程度進んでいるものの,仮設住宅の住民の間で買い物環境が悪化している.市街地および仮設住宅周辺において,フードデザートエリアの拡大が確認された.
著者
駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000073, 2018 (Released:2018-06-27)

1. 研究の背景と目的本シンポジウムの趣旨は「不動産の利活用から地方都市再生を考える」であるが,地方都市再生において中心市街地活性化は重要テーマのひとつに位置づけられる。中心市街地活性化法は1998年の制定から2006年,2014年の二度の改正を経て現在も続けられており,自治体は各種事業などを展開している。ここで,法律に基づき基本計画を策定する際に各自治体によって定められる中心市街地の「位置および区域」について注目したい。中心市街地活性化法における中心市街地は,「都市全体の維持に必要な商業・サービス業をはじめとする都市機能が集積する原則として単一の中心核」のように要約される。こうした中心市街地の社会・経済状況や政策・事業の実施状況については,地理学に限らず都市計画などの隣接分野でも研究がなされてきたが,目標指標の特徴と到達状況を検討した伊藤・海道(2012)は,共通の指標で判断することが難しく,「地域特性をふまえた説明力のある指標」が必要であることを指摘している。そこで本発表では,中心市街地活性化基本計画認定都市における中心市街地(基本計画区域)における都市・商業機能の集積状況を,統計結果および施設立地状況から明らかにする。2. 分析方法本発表では,2017年12月現在,中心市街地活性化基本計画によって設定されている141都市144基本計画区域を研究対象とした。自治体区域全体に占める中心市街地活性化区域における都市・商業機能の集積状況について検討する。商業機能については,商業統計に基づく事業所数,従業者数,年間販売額,売場面積,そして大型店の立地とする。都市機能については,公共施設,医療機関,福祉施設,文化施設,バス停,鉄道駅とした。これらのデータについて,認定自治体全域および中心市街地における立地状況についてGISを用いて計測し,その集積状況について算出した。また,これらの結果を用いて,類型化を行った。3. 分析結果平成14年および平成26年の商業統計メッシュ統計結果を用いて,区域における小売業の事業所数,従業者数,年間販売額,売場面積について推計するとともに,自治体全体に占める中心市街地の割合について算出した。その結果のうち,年間販売額に関して,その変化率と集積率の推移との関係をしめしたものが図1である。r=0.61と両者の間には中程度の正の相関がみられ,中心市街地における小売業が活発になるほど,集積も高まる傾向にあることが明らかとなった。ただし,正の値を示す中心市街地は144区域中3区域(2.1%)に過ぎない。一方,年間販売額は減少しているものの集積率が高まっている中心市街地が6区域あり,これらの自治体については,「集積」という観点からは成功しているとみることができる。発表当日は,そのほかの都市・商業機能の集積状況の結果を提示するとともに,いくつかのタイプに分けて考察した結果について報告する。
著者
畠山 輝雄 駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>1</b><b>.はじめに</b></p><p></p><p> COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大に伴い,人間の移動がウイルス感染拡大に影響するという観点から,各国で独自の移動制限が行われた。日本でも新型インフルエンザ対策特別法(以下,特措法)に根拠を置く緊急事態宣言に伴い都道府県を単位とした「移動自粛要請」という形で対策が行われた。このような中,特措法や緊急事態宣言に関わるさまざまな計画や提言,方針において「地域」が使用され,それらを背景として,国内の移動制限が行われた。しかし,これらで使用された「地域」は,異なる空間的範囲や用途による抽象的な表現であったため,具体性の欠如や実態との乖離が生じている。</p><p></p><p> 地理学では,地域概念として「地域」を類型化し説明してきた背景があるため,本報告では緊急事態宣言に伴う移動制限に対して地域概念という視点から考察する。</p><p></p><p><b>2</b><b>.研究方法</b></p><p></p><p> まず,COVID-19の感染者数の空間分布について,各都道府県のウェブサイトから抽出したデータにより都道府県単位と保健所管轄区等の単位により比較をした。その上で,移動制限に関する権限の考察を,特措法の条文と各都道府県の新型インフルエンザ対策行動計画から考察した。そして,移動自粛要請を都道府県単位とした経緯について,新聞記事検索や政府の関連資料,全国知事会資料から考察した。さらに,海外の移動制限との比較をするために,各国における日本大使館のウェブサイトに掲載される資料から考察した。</p><p></p><p><b>3</b><b>.都道府県単位の移動制限と地域概念</b></p><p></p><p> COVID-19の感染者数の空間分布は,一般的に都道府県単位で公表されているが,保健所管轄区等の単位で再集計したところ,都道府県内でも空間分布に地域差があり,一様ではないことが明らかとなった。</p><p></p><p> 以上よりCOVID-19の感染分布と移動制限を地域概念から考察すると,COVID-19の感染拡大地域は「等質地域」であり,感染要因は飛沫感染や接触感染が多いことを考えると,人間の行動圏(「機能地域」)と大きく関係する。このような等質地域や機能地域という実質地域で生じている問題を,「都道府県をまたぐ移動の自粛」という形式地域単位での移動制限によって感染防止対策をした。</p><p></p><p> 都道府県単位で移動制限を行うメリットには,万人にわかりやすく,規制や監視をしやすいことが挙げられる。都道府県知事には,緊急事態宣言により住民の移動自粛要請をする権限が国から委譲され,それにより自動車ナンバー調査や都道府県境による体温チェックなどが行われた。しかし,特措法では自粛要請として強制力はない。つまり,上記のような移動制限の明確化は,結果として自粛警察による監視を促す結果となった。これはデメリットでもあり,移動に関する明確な境界設定による差別や偏見がおき,県外ナンバーへの嫌がらせも生じた。</p><p></p><p><b>4</b><b>.都道府県単位の移動制限の経緯と諸外国との比較</b></p><p></p><p> そもそも,特措法には移動自粛についての言及はあるが,その空間的範囲については明確に示されていない。なぜ,「Stay home」だけではなく,都道府県という空間的範囲への言及が必要だったのであろうか。これは,2020年3月中旬から4月にかけて大都市圏での移動自粛要請やコロナ疎開と呼ばれる大都市圏から地方圏への移動による感染拡大が背景であると考えられる。政府の方針において最初に都道府県単位の移動制限の言及があったのは4月7日の7都府県への緊急事態宣言時であり,4月16日の緊急事態宣言の全国への拡大時により強調されることとなり,その後は既成事実化された。</p><p></p><p> 諸外国では,日本と同様に州や県単位での移動規制が多い。しかし,これは日本とは異なり法的強制力があるゆえ意味のあることである。そのような中,フランスでは自宅からの距離による移動規制をしていることは興味深い。</p><p></p><p> 日本においては,都道府県界という移動境界を明確化することはデメリットの方が大きいため,フランスで行われた機能地域的対策が,現行法の強制力がない中ではより現実的ではなかろうか。また,今回のように都道府県に強力な権限を委譲していくことを今後さらに進めていくのであれば,より住民の生活圏に合致する都道府県域の再編も視野に入れる必要がある。</p><p></p><p> </p><p></p><p> 本研究の遂行にあたっては,科学研究費補助金(基盤研究(B)「ローカルガバナンスにおける地域とは何か?地方自治の課題に応える地理的枠組みの探究」研究課題番号20H01393,研究代表者:佐藤正志)を使用した。</p>
著者
李 虎相 兼子 純 駒木 伸比古
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.199-208, 2018 (Released:2018-04-13)

本稿は,韓国の基本的な人口動態を明らかにするとともに,少子高齢化の進展する日韓の地方都市に対する活性化策について検証することを目的とする。韓国国内の地域別の人口分布とその変化についてみると,首都ソウルおよび首都圏への一極集中が進んでおり,それらの地域以外からの人口流出によって都市間格差が拡大している。首都圏に隣接する忠清南道の都市群を事例として,その人口動態を分析した結果,首都圏に近接して位置する人口規模の大きい都市ほど人口増加を示す一方で,下位都市では大幅な人口減少を示しており,道内部でも二極化する構造が明らかとなった。加えて本稿では,そうした都市間格差を是正するための日本と韓国における都市活性化策について,特に2000年代以降の地方都市への施策を比較・検討した。両国に共通する特徴として,1990年代の景気後退の影響により,政策の方向性が経済成長を前提とした国家主導型から,低成長時代を見据えた地域主導型に転じていることを指摘できる。
著者
武者 忠彦 箸本 健二 菊池 慶之 久木元 美琴 駒木 伸比古 佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000278, 2018 (Released:2018-06-27)

中心市街地再生論の転換低未利用不動産の増加を実態とする地方都市中心市街地の空洞化に対しては,商業振興や都市基盤整備の名目で,これまでも夥しい額の公共投資がなされてきたが,その成果はきわめて限定的であった.こうした現状に対して,近年は中心市街地再生をめぐる政策を批判的に検討し,空洞化を是認する論調も強まっているが,政府は2014年に策定した「国土のグランドデザイン2050」において「コンパクト+ネットワーク」モデルを提示しているように,人口減少や財政難,低炭素化を背景としたコンパクトシティの文脈から,中心市街地再生の立場を継続している.もっとも,政府が掲げるコンパクトシティ政策は,土地利用と施設立地の効率化を追求した中心市街地への機能と人口の〈再配置論〉であり,どうすればそのような配置が可能になるのか,そのような配置にして生業や生活が成り立つのか,そこで望ましい社会や経済が形成されるのか,といった議論は各地方都市の「マネジメント」に丸投げされているといってよい.都市マネジメントの可能性:事例報告からの示唆では,地方都市にはどのようなマネジメントの可能性があるのか.これまでの中央主導による補助事業に依存した開発志向型の再生手法が,ほとんど成果を生み出せず,もはや依存すべき財源もないという二重の意味で使えない以上,基礎自治体や民間組織のようなローカルな主体が中心市街地という場所の特性を見極め,未利用不動産を利活用して戦略的に場所の価値を高めることが不可欠となる.その際には,高齢化,人口流出,共働き世帯の増加,公共交通網の縮小など,地方都市固有の文脈をふまえることも必要である.本シンポジウムで報告する未利用不動産の活用事例からは,以下の2つの可能性が示唆される.第1に,PPP/PFIや不動産証券化などの市場原理を導入して介護施設や商業施設を開発した事例のように,「低未利用状態でも中心市街地であれば新たな投資スキームを導入することで価値が見出される」という可能性である(菊池報告,佐藤報告).第2に,都市的環境にありながら相対的に地代の安い未利用不動産では,リノベーションによって新規参入者の経営が成立し,賑わいが生まれ,そこに新しい社会関係が構築されるというように,「中心市街地で低未利用状態だからこそ価値が生まれる」という可能性である(久木元報告,武者報告).とはいえ,これによってすべての地方都市が再生にむけて動き出すわけではない.各都市の立地や人口のポテンシャルを考慮すれば,どこかに〈閾値〉はあるはずであり,選択可能な戦略も異なってくる(箸本報告,駒木報告).未利用不動産の利活用と新しい幸福論本シンポジウムで議論する未利用不動産を切り口とした中心市街地再生論は,同じ再生を目的としながらも,かつてのような国の補助事業に従って計画されたエリア包括的な再生論とは異なる.未利用不動産を利活用を通じて,それぞれの主体が中心市街地という場所の特性をあらためて構想し,商業やオフィスの機能に限らず,居住,福祉,子育てなどの機能を取り込みながら,周辺エリアの価値を高めていく.それは単なる商業振興でもなく,都市基盤整備でもない,個別物件の再生から戦略的に考える都市マネジメントの視点である.こうして再構築される中心市街地での生活風景が,かつての百貨店や商店街が提供した「ハレの場」や郊外における「庭付き一戸建て」に代わる幸福論となり得るのか,コンパクトシティの成否はこの点にかかっているように思われる.
著者
箸本 健二 駒木 伸比古
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-19, 2009-03-15 (Released:2020-04-08)
参考文献数
22

本稿は,1都7県に立地する287 店舗のコンビニエンスストアを,POS データに基づく販売特性からタイプ分類した上で,平日と週末での販売特性の差異を把握し,その背景にある地理的要因を検討する.分析の結果,287 店舗のコンビニエンスストアは7つの店舗類型に区分できる.各店舗類型を規定する因子は,主として外出先因子(昼間人口),家庭内因子(夜間人口),他業態代替因子(競合状況)の3因子である.また7つの店舗類型は,国道16 号線の内側に卓越する5類型と,外側に卓越する2類型に大別され,国道16 号線を挟んで店舗類型が大きく変化している.次にPOS データを平日・週末に分け,各別に店舗類型を作成すると,含まれる店舗は変化するものの,店舗類型そのものは平日と週末とでほぼ共通している.平日と週末とで属する類型が異なる店舗は,来街者の数や質が平日と週末で大きく異なるオフィス街や学校・駅周辺に多く分布する.
著者
兼子 純 山元 貴継 橋本 暁子 李 虎相 山下 亜紀郎 駒木 伸比古 全 志英
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

日韓両国とも,地方都市における中心商業地の衰退が社会問題化している。しかしながら,韓国の地方都市の中心商業地は,人口減少や住民高齢化のわりに空き店舗が目立たず,日本でいう「シャッター商店街」がみられにくい(山元,2018)。そこで本発表では,2016年と2018年に発表者らが行った土地利用実態調査の結果をデータベース化し,韓国地方都市の中心商業地における店舗構成の変化を明らかにすることを目的とする。<br><br>調査対象地域として,韓国南部の慶尚南道梁山(ヤンサン)市の中心商業地(新旧市街地)を選定した(図1)。梁山市は同道の東南部に位置し,釜山広域市の北側,蔚山広域市の南西側に接している。高速道路で周辺都市と連結されており,さらに,釜山都市鉄道2号線によって,釜山市の中心部とも直接結ばれている新興都市である(2017年人口:324,204)。旧市街地は梁山川の左岸に位置し,南部市場が立地している。新市街地は旧市街地の南西約1km,2008年に開通した地下鉄梁山駅前に位置している。近年では,両市街地と梁山川を挟んで対岸に位置する甑山(チュンサン)駅前で,新たな商業開発が進行している。<br><br> 韓国では短期間で店舗が入れ替わることもあって,日本の住宅地図に相当するような,大縮尺かつ店舗名などが記載された地図が作成されることはまずない(橋本ほか,2018)。そのため発表者らは,韓国における中心商業地の構造変化を明らかにするための基礎資料の作成を念頭に置き,2016年3月に梁山市の新市街地と旧市街地において土地利用調査を実施し,そのGISデータベースを構築した。この時の結果をもとに,2018年3月に同じ範囲かつ同様の調査手法で再度土地利用調査を実施し,2年間で店舗が変化している箇所の業種を抽出した。今回の発表では,1階で店舗が変化している部分を分析対象とする。<br><br> 2016年の調査では,新旧市街地での商業機能の分担,つまり旧市街地では伝統的な商品や生鮮食料品店の集積,新市街地では若年層向けの物販サービス機能が卓越し,チェーン店(それらが展開する業種)の立地が確認された。そうした両市街地における2016年から2018年の2年間で店舗構成が変化した箇所を確認すると,旧市街地では530区画中129区画(24.3%),新市街地では485区画中132区画(27.2%)で店舗が入れ替わっていた。<br> 旧市街地において,在来市場を中心とする中心部よりも周辺部で空き店舗が目立つようになり,市街地の範囲が縮小している。新市街地では,店舗の入れ替わりが激しいことに加えて,店舗区画の分割や統合なども顕著である。現地での聞き取り調査によると,賃貸契約は2年が一般的であるが,契約更新時の賃料上昇や韓国特有の権利金の存在もあって,現在では新市街地から,新規に建設が進む甑山駅周辺に移転する店舗が増加しつつあるという。当日の発表では,変化箇所の業種や地域,区割りの特徴などから,梁山市全体の商業地の構造変化について報告する。
著者
兼子 純 山元 貴継 山下 亜紀郎 駒木 伸比古 橋本 暁子 李 虎相 全 志英
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<u>1.研究課題と目的</u><br> 日本においても韓国においても,国土構造として首都への一極集中が指摘され,首都圏と地方都市との格差が拡大している。共に少子高齢化が進行する両国において,地方都市の疲弊は著しく,都市の成立条件や外部環境,地域特性に合わせた持続的な活性化策の構築が必要とされている。その中で日本における地方都市研究では,モータリゼーション,居住機能・商業機能の郊外移転などによる,都市中心部の空洞化問題が注目されやすい。空洞化が進んだ都市中心部では,低・未利用地の増加,人口の高齢化,大型店の撤退問題,生鮮食料品店の不足によるフードデザート問題などが生じ,大きな社会問題となっている。 一方で韓国では,鉄道駅が都市拠点となりにくく,また同一都市内で「旧市街地」と「新市街地」とが空間的にも機能的にも別個に発達しやすいといった日本とは異なる都市構造(山元 2007)が多くみられる中で,バスターミナルに隣接した中心商業地などの更新が比較的進んでいる。そして,地理学の社会的な貢献が相対的に活発であって,国土計画などの政策立案にも積極的に参画する傾向が認められるものの,金(2012)によれば,研究機関が大都市(特に首都ソウル)に偏在し,計量的手法の重視および理論研究への偏重によって,事例研究の蓄積が薄い。 それらを踏まえた本研究の目的は,低成長期における韓国地方都市の都市構造の変容を明らかにすることを目指して,その手がかりとしての土地利用からみた商業地分析の手法を確立することである。なお,今回の報告は調査初年度の単年次のものであり,今後地域を拡大して継続的に研究を進める予定である。<br><u>2.韓国における一極集中と地域差</u> <br> 先述の通り,韓国は首都ソウルとその周辺部への一極集中が顕著である。その集中度は先進諸国の中でも著しく高く,釜山,大邱,光州,大田の各広域市(政令指定都市に相当)との差が大きい一方で,これら広域市と他の地方都市との格差も大きい。 <br><u>3.対象都市</u> <br> 地方都市をどのように定義するのかについては議論の余地があるが,本研究では首都ソウルとその周辺部を除く地域の諸都市を前提とする。今回の調査対象地域としては,韓国南部の慶尚南道梁山市の中心商業地を選定した。梁山市は同道の東南部に位置し,釜山広域市の北側,蔚山広域市の南西側に接している。高速道路で周辺都市と連結されており,さらに,釜山都市鉄道粱山線(2号線)によって,釜山市の中心部とも直接結ばれている。このように梁山市は,釜山大都市圏の一部を構成する都市である一方,工業用地の造成が進み,釜山大学病院をはじめとする医療サービスおよび医療教育の充実した新興都市として独立した勢力があり,人口増加も顕著である(2014年人口:292,376)。 そのうち新市街地は梁山川左岸に位置し,そこに梁山線が2008年に全通し,その終着点でもある梁山駅が開業した。同駅に近接して大型店E-MARTが立地しているほか,計画的に整備された区画に多くの商業施設が集積している。E-MARTに隣接してバスターミナルも立地し,全国各地への路線網を有する。一方,旧市街地は新市街地から見て国道35号線を挟んだ東に位置している。そこには梁山南部市場およびその周辺に生活に密着した小売店舗が集積しており,伝統的な商業景観が形成されている。<br><u>4.調査の方法</u> <br> 今後,韓国の各都市の都市構造の動態的変化を継続的に調査することを目指して,今回はその調査手法の確立を目指す。特に,韓国の商業地における店舗の入れ替わりは日本に比して頻繁で,その新陳代謝が都市を活気づける要因ともなっており,その変化に関心が持たれる。しかし,そうした変化を既存の資料から明らかにすることは難しく,実態調査が求められる。そこで今後,継続的に定点観察することを予定している中で,業種分類の設定の仕方なども重要となる。今回は予備的調査として,事例都市において商業地の調査手法を確立し,その方法を他都市に展開していくことを目指す。