著者
桐山 信一 Nobukazu KIRIYAMA
出版者
創価大学教育学部・教職大学院
雑誌
教育学論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.60, pp.17-35, 2009-01-31

高校物理を履修して波の学習を行えば,たいていの波動現象は理解できるようになる。しかし,最近の理工系大学生も物理を履修しない者が増えてきた。ドップラー効果を理解するには,波長や振動数を含む波動概念が形成されていなければならない。模擬授業を行って,中学生が理解可能な波の学習内容を探ったところ,波源の振動が媒質を伝わり波形が移動することは十分に理解できるのではないかという実感が得られた。ドップラー効果を含む多様な自然現象を理解するために,中学校理科の「音と光」の単元で波の基本的な学習が行われるのが望ましい。高校物理では音波のドップラー効果を扱うが,教科書には適切な実験が見あたらない。そこで,水波ドップラー効果の簡単な観察方法,定量的な側面まで理解可能な指導方法の可能性を探った。水面上に水滴を落下させて生じる波(波長λ0)で,水滴滴下部を移動させると水波ドップラー効果が観察される。デジタルカメラで撮った画像から前方波長λ1と後方波長λ2を実測し,λ0と比較するという方法を検討した。さらに,生徒や学生が容易に実施できる方法として,彼らが持っている携帯電話のムービー機能を用いて水波の動画測定を行い,コマ送り再生をして波長変化を測定するという方法を検討した。ドップラー効果では,波長変化Δλ(=λ0-λ1)が波源の移動速度v に比例する。v を変化させて比Δλ/λ0との関係を調べれば,ドップラー効果を検証できる。この方法では,画像上でのΔλ とλ0の実測は必要なく,画面上での相対的測定によって比Δλ/λ0を求めればよいという簡易さがある。したがって,携帯電話を用いた水波ドップラー効果の検証は,高校物理の探究活動や課題研究の内容としてふさわしいと考えられる。

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