著者
並松 信久
出版者
京都産業大学日本文化研究所
雑誌
京都産業大学日本文化研究所紀要 = THE BULLETIN OF THE INSTITUTE OF JAPANESE CULTURE KYOTO SANGYO UNIVERSITY (ISSN:13417207)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.198-150, 2020-03-31

わが国では高度経済成長期において、食生活や食文化が大きく変化した。日本に限らず、諸外国においても経済成長期に食生活が変化することは、すでに多くの研究で明らかにされている。それは主に穀物中心の食生活から、肉類や蔬菜・果樹などが多くなる食生活に変わると説明されている。さらに、この過程では多種多様な食材が入ってくると説明される。しかし、この説明によって食生活自体の変化はわかるものの、食材を供給している農業との関連がなければ、変化の要因はわからない。つまり、食生活という需要面だけでなく、農業という供給面の変化を関連させて説明する必要がある。 そこで本稿は、高度経済成長期における食生活と農業との関連に注目し、わが国の食生活を含む食文化の特徴を明らかにした。戦後、わが国はアメリカ型食生活の強い影響を受けると同時に、食のインスタント化が進んだ。その一方で、食料不足を解消するために、農業の改良が進み、コメの増産が達成された。これらはほぼ同時並行に進んだ結果、万国博覧会をきっかけとする食のファッション化がもたらされると同時に、コメ余り現象が生じた。そして飽食時代に突入するとともに、再びアメリカの影響によって日本型食生活の見直しが進んだ。これらの動きは、わが国で明治期から続いていた食のフュージョン化が強化されたものといえる。現在、この食のフュージョン化は新たな問題を抱えている。

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