著者
藤田 翔 フジタ ショウ Fujita Sho
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.123-141, 2016-03-31

時間と空間とは何か?この問い掛けに関しては、紀元前より多くの議論が交わされてきた。近年ではこの問い掛けは、科学の最先端である物理学によって大いに解明されてきた。20世紀初頭にアインシュタインによって提唱された一般相対性理論によれば、時間も空間の一種であり、時空間そのものは構造を持っていて、その構造は存在している物体によって影響を受ける。時間の流れるスピードは一定ではなく、時空間は曲がっているという、当時の常識を越えた発想は、時空の哲学を益々飛躍させた。さらにその後も物理理論は休むことなく進展し、現代宇宙論や量子重力でも時空は4次元を超えて、物理の最も根本的な系(パラメータ)として扱われている。本論文は、その最も根本的とされる時空間の存在を、改めて哲学的にカテゴライズし、一般相対性理論の枠組みにおいて、時空の実在性にある種の答えを提供することを目的としている。時空に関してその存在を主張する実体説 (substantivalism) と、時空をあくまでモノの性質と見なす関係説 (ralationism) の長い対立を背景に、構造実在論(structural realism) という考え方を介入することによって、結局はいずれの相反する立場も突き詰めれば共通して、「時空の本質はその構造全体にある」ということに着眼していることを示す。

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