著者
藤岡 明房
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.163-188, 2013-03-29

平成21 年9 月政権についた民主党は,かねてからマニフェストで取り上げていた高速道路の無料化を実施する前に,限定した路線だけで高速道路の無料化を実施するという社会実験を平成22 年6 月から平成23 年3 月末までの期間に行った.その社会実験は37 路線50 区間において行われ,全車種が対象となった.社会実験が終わった後,政府から社会実験の結果が発表されたが,社会実験により,高速道路の交通量が増加することや,平行する一般道の交通量が減少することが予想されたにもかかわらず,必ずしも交通量の増加や減少は明らかではなかった.その理由として,社会実験として選ばれた区間は,当初からあまり影響が出ないような区間が選ばれていたことが考えられる.そこで,社会実験の効果を統計的に確認するため,統計的手法の一種である一元配置分散分析と二元配置分散分析を社会実験の結果に適用してみた.また,社会実験の効果が地域的に異なっているのか否かを確認するため,全国を6 つの地域に区分して分析を行ってみた.その結果,関東地域,中部・近畿地域で社会実験による交通量の増加が有意ではなかったことは予想できたが,北海道も交通量の増加は有意ではなかった.影響があったのは,東北地域と中国・四国地域であり,限定された影響といえる.並行一般道路の交通量はある程度減少するものと予想されていたが,実際にはすべての地域において有意な差は見いだせなかった.したがって,今回の高速道路無料化の社会実験の結果からは,無料化した高速道路の交通量は大幅に増加するとか,平行する一般道の交通量は著しく減少するとかは必ずしも言えないことになった.

言及状況

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