著者
橋本 敬 西部 忠
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.131-151, 2012-03-08

本論文は, 制度の多様性と内生的変化を示す制度生態系を記述する数理モデルとして「ルール生態系ダイナミクス」(Rule Ecology Dynamics: RED)を提示し, それが経済社会進化の態様記述や政策展開に対して持つ経済学的含意を論じる。まず, 戦略ルール(ミクロ主体の内部ルール)とゲームルール(外なる制度)を経済社会の複製子(If-then ルール)と再定義し, 制度を, ミクロ主体の認識・思考・行動とマクロ的な社会的帰結をメゾレベルで媒介する, ミクロ主体によって共有されたルールと捉える。これにより, ゲーム形式と戦略的予想均衡という従来の2つの制度観を, それぞれ「ゲームルール」と「共有された戦略ルール」として統一的に理解できる。こうした進化的制度観の下, REDは, ゲームルールを評価するミクロ主体の価値意識の集合的表象(内なる制度)を「メタルール」として導入することにより, 進化ゲーム理論とレプリケータ・ダイナミクスを統合・拡張し, 戦略ルールとゲームルールの相対頻度が内生的に変化するような共進化を記述し分析できる。このため, REDは進化主義的制度設計のための理論枠組みとなる。

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