- 著者
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安住 薫
小林 祥子
岸 玲子
- 出版者
- 北海道公衆衛生学会
- 雑誌
- 北海道公衆衛生学雑誌 (ISSN:09142630)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.29-38, 2012
環境化学物質の胎児期の曝露が、児の発育・発達、疾病に影響を及ぼすことが明らかになりつつある。その作用機序の解明に、最近、エピジェネティクスが注目されている。2012 年までに報告された、胎児期環境化学物質曝露が児ゲノムDNA のメチル化に与える影響を調べた疫学研究の文献レビューを行った結果、喫煙由来や多環芳香族炭化水素などの環境化学物質の曝露により、児ゲノムDNA のメチル化状態が変化することが確認された。曝露要因の中では、妊娠中の母親の喫煙がDNA メチル化に与える影響を調べた報告が最も多かった。DNA メチル化の変化は蓄積することによって遺伝子発現を変化させるため、胎児期の化学物質曝露によって生じる児ゲノムDNA メチル化の変化は、胎児の発育・発達への影響のみならず、出生後の児の健康リスクに影響を及ぼすことが示唆された。