- 著者
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上山 浩次郎
- 出版者
- 北海道大学大学院教育学研究院
- 雑誌
- 北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
- 巻号頁・発行日
- vol.138, pp.195-209, 2021-06-25
本稿では,教育機会の不平等における地域と社会階層の関連構造を検討した。地域による教育機会の不平等に関する研究は,これまでコンスタントに行われてきた。ただし,地域的要因が社会階層などの他要因に還元できると解釈されうることから,地域を属性的な要因として位置づけることには批判も存在してきた。そこで,本稿では,進路選択に対して,地域変数と社会階層的変数が,どのように関連しているのかを計量的に把握することを試みた。分析の結果,たしかに,進学行動に対して,地域変数は社会階層的変数を通して格差を生成していた。だが,社会階層的変数に還元できない形でも地域変数は格差を生成していた。さらに,両者を比べると,社会階層的変数を媒介しない形の方が,格差を生成する度合いが大きい。ここからは,地域的要因は,社会階層的要因とは相対的に独自に教育機会の不平等という現実を生成していることがあらためて示唆される。