著者
間枝 遼太郎
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.59-79, 2022-01-31

本稿では、叡山文庫天海蔵『諏訪大明神画詞』の祭絵部第一から第七、および末尾に付随する『当社春日大明神之秘記』の翻刻を行い、また『当社春日大明神之秘記』の解題を付す。 『当社春日大明神之秘記』は、諏訪信仰研究においては『諏訪大明神画詞』の教林文庫本などの末尾に付随している文献として比較的古くから存在が認識されていたものの、春日社の研究ではあまり知られないものであった。春日社の社記を多く収録する『神道大系』神社編十三春日(神道大系編纂会、一九八五年)や藤原重雄・坪内綾子・巽昌子「中世春日社社記拾遺」(『根津美術館紀要此君』第四号、二〇一三年三月)などでも紹介はなされていない。 『当社春日大明神之秘記』の作成者と考えられる人物は、元亀三年(一五七二)の奥書に名が記される「采女春近」である。采女春近は春日社の神人(下級神職)の中でも有力な家である南郷常住神殿守家(采女姓)の人間と推測され、故実に詳しい人物であったと思われる。 『当社春日大明神之秘記』の内容は、基本的に文永年間頃成立の『中臣祐賢春日御社縁起注進文』を素材としながら、十六世紀の当時までに伝わっていた他説、さらには比較的新しい説なども組み込んだものとなっている。室町時代には春日社の社家による社記の研究は停滞したとも言われるが、『当社春日大明神之秘記』はそのような時期における、春日社の社記に関する活動を示す貴重な資料の一つとして位置付けることができる。

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昨年3月に叡山文庫本『諏訪大明神画詞』の翻刻を出しましたが、その続編がこの度北大の機関リポジトリで公開されました。 今回は解題で、叡山文庫本の末尾に付随している『当社春日大明神之秘記』(16世紀頃の南都春日社の社記)について少し解説しています。 https://t.co/qN1w86nRtr

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