著者
栁内 景太 関 あゆみ
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-31, 2023-03-24

書字困難児に対して不適切な対応が為されると、書字への抵抗が強まり学習意欲の低下を引き起こすことがある。そこで、本研究では小学生の書字困難児4 名を対象に、書字困難児の認知行動的特徴と経過との関連について検討した。その結果、共通する認知行動面の困難としてワーキングメモリ、巧緻性、目と手の協応、視覚認知の困難と不注意が認められた。また、共通する経過として、学習する漢字がより複雑になり、自己客観視が可能となる小学3 年時頃より、自尊心が低下し、学習意欲が低下することが認められた。加えて、行動面の困難として多動と対人関係にも困難を有すると、不適応の原因を見極めることが難しく、書字への支援が遅れ、学習意欲の改善が著しく困難になることが示唆された。従って、多動と対人関係の困難が目立つ場合でも、書字困難への対応を後回しにしないことが重要と思われる。

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