著者
纐纈 一起 鷹野 澄 坪井 誠司 宮武 隆 阿部 勝征 萩原 幸男
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.517-532, 1990-03-30

地震予知計画の下で国立大学により運営されてきた地震予知観測情報ネットワークでは,各構成機関により維持・管理されている約160点の地震観測点の波形データが,全国7箇所の地域センター等に集められ,そこでそれぞれ独自に開発された自動処理システムにより,地震波到着時刻の読み取り・震源位置の決定などがリアルタイムで行なわれている.この処理結果はオンラインで地震研究所の地震予知観測情報センター(EPDCに転送され,リアルタイム地震データとしてデータベースに保存されている.EPDCではこのデータを統合し,TSSにより表示できるようにしたシステムを開発した.統合処理は2つのジョブが前処理と本処理を担当する.前処理ではデータを震源時順に並べ替えることと,震源時と震央座標が近い地震を同一地震と仮判定することが行なわれる.この結果がさらに本処理に送られ,親子法による同一地震の本判定と震源再決定が実行される.震源再決定で得られた統合処理結果は,ユーザのTSSごとに起動される検索プログラムで表示させることができる.1ヵ月間の処理結果を気象庁の震源速報と比較したところ,海の地震の深さが異なるのが目立つ程度で,マグニチュード3半ばより大きい地震はよく一致した.それより小さな地震では全般的に気象庁より検知能力が高いが,観測網が粗い中国・四国地方やまったく観測点がない九州地方は気象庁が優れている.本システムの今後の課題は,現在大きな地震のデータ統合を優先しているため,小さい地震の分離能力が弱い点を改善することである.また,現在情報不足で困難となっているマグニチュードの独自決定も課題であろう.

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