著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
勝俣 啓 辻 宏道 纐纈 一起 束田 進也 大木 聖子 勝俣 啓
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平成20年度に発生したチリ地震では津波の日本への到達が予測され,一日以上にわたって注意報や警報が発令された.地震発生から一週間後に津波に関する意識調査を実施した.「外国で起きた地震で発生した津波は日本まで到達することがあると思うか」などの問いに対しておよそ95%の正答率が得られ,日本人の津波に関するリテラシーの高さが明らかとなった.平成22年度はイタリアにおける地震予知問題に関する調査を実施した.地震予知情報を的確に発令しなかったことに対して,地震学者が刑事責任を問われるという特異な事件の経緯を現地調査も含めて詳しく分析した.
著者
大木 聖子 中谷内 一也 横山 広美 纐纈 一起 泊 次郎 桒原 央治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

社会が災害科学に期待することは自然災害の防止や軽減であり,それには災害を予測する必要があるが,予測が困難な場合が多いため,災害科学の社会貢献は不定性が高くなる.それを念頭に置かずに「踏み越え」が行われると科学者が刑事責任まで問われることがあり,イタリアのラクイラ地震裁判はその最近の例である.我々は,資料収集や聞き取り調査,判決理由書の分析等を行い,そこでの災害科学の不定性と科学者の責任を検討した.その結果,裁判の対象となったラクイラ地震の人的被害は,災害科学の不定性を踏まえない市民保護庁副長官の安易な「安全宣言」が主な原因という結論を得た.また,これのみを報じた報道機関にも重大な責任がある.
著者
都司 嘉宣 中西 一郎 佐藤 孝之 草野 顕之 纐纈 一起 西山 昭仁 行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

およそ100年ごとの間隔で発生していることが、歴史記録から判明している東海地震・.海地震、三陸沖の巨大地震、およびそれらに誘発されたと考えられる内陸直下の地震について、歴史記録の収集、現地調査、および理工学的考察を経て、発生機構にいたる研究を推進した。海溝型巨大地震として1707年宝永地震、1854年安政東海・.海地震、および古代に発生した869年貞観三陸地震などを検討した。内陸直下の地震としては1596年文禄豊後地震、1828年文政越後三条地震、1812年文化神奈川地震、1855年安政江戸地震などを研究した。
著者
原田 智也 纐纈 一起
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

『理科年表』の「日本付近のおもな被害地震年代表」(以下,「年代表」)における1884年までの被害地震(以下,歴史地震)は,基本的に『日本被害地震総覧』(宇佐美,1987,1995,2003;宇佐美・他,2013)(以下,『総覧』)によっているが,『総覧』が版を重ねてきたことや最新の知見の蓄積にともない見直しが必要であった.我々は『理科年表』(第91冊,2018年版)の「年代表」の作成に際して,おもに,歴史地震の“被害摘要”における誤植の修正と改訂を行った.その際,『総覧』で存在が疑問視されている歴史地震については,削除せずに疑わしいという情報を追記した. 「年代表」は『総覧』の歴史地震のすべての歴史地震を掲載していない.これは編集担当の研究者が2代に渡って地震の選択は手を付けなかったためであるので,現在,我々は『理科年表』(第94冊,2021年版)の「年代表」に,これまで掲載されてこなかった『総覧』の歴史地震を追加する作業を進めている.『総覧』の歴史地震には,通し番号がある歴史地震(以下,「番号地震」)とそれがない歴史地震(以下,「無番号地震」)とがある.無番号地震は,『総覧』の著者がその存在を極めて疑わしいとした歴史地震であるので基本的に追加しない.ただし,無番号地震である明応4年8月15日の関東地震は重要性や最近の研究等を鑑みて追加する.「年代表」に掲載されていない番号地震である87地震が追加の対象となる.しかしながら,番号地震であっても,応永30年10月11日の羽後の地震や天和4年11月16日の日向の地震のように,『総覧』の改訂により新たに存在が疑問とされた地震が12地震存在する.これらの地震については追加を保留する.さらに,史料の信頼性などの問題により,我々がその存在や被害の有無についての検討が必要だと考える,永正8年11月2日の茂原の地震,安政2年6月24日の杵築の地震のような地震も31地震存在する.これらの地震については,検討を順次進めていく予定であるが,検討が終わるまでは追加を保留する方針である.したがって,今回の改訂では,基本的に上記以外の44地震を追加する予定である.さらに,『総覧』にない万寿4年3月2日の京都の地震,永享5年1年24日の伊勢の地震,享徳3年11月24日の陸奥の地震や,『総覧』の宝永地震の解説文内にある宝永4年10月4日の駿河・甲斐の地震の計4地震も追加する予定である.また,『総覧』に反映されていない最近の研究による知見(例えば,天保2年10月11日の肥前の地震(加納,2017)や明応7年6月11日の日向灘地震(原田・他,2017)の解釈)による「年代表」の改訂も行う予定である. 次に,今回あるいは今後見直すべき問題として,「年代表」の歴史地震の発生年月日の西暦・和暦表記について言及する.西暦について「年代表」は,『総覧』が踏襲されているために,ユリウス暦が用いられた1582年以前の西暦日付であっても明治以来の慣行であるグレゴリオ暦で表記されており,世界との整合性が失われている.日本でも,歴史地震研究会の会誌『歴史地震』では,1582年以前はユリウス暦を使用することを奨励しており,最近は1582年以前についてグレゴリオ暦を用いる歴史地震の研究者はほとんどいない.したがって,「年代表」でも今後,英訳を予定していることなどから,西暦表記の見直しが必要であると考えられるが,研究者でない一般の方々も手に取る『理科年表』の性質上,併記するなど慎重に行わなければない.和暦について「年代表」は,明治より前の改元では改元前に遡ってその年全体を改元後の年号で,南北朝時代の年号は南朝年号で表記されている.これは戦前の歴史学における慣行であり,歴史地震の研究はこの時期の大森房吉・今村明恒・武者金吉らの精力的な仕事によって創始されたので,この慣行が今でも続いている.しかしながら,現在の歴史学では通常,改元の年全体を改元後の年号で表記することはせず,南北朝時代は北朝年号で表記するという.したがって,「年代表」の和暦も現在の歴史学に沿った表記法がよいと考えられる.しかし,“安政東海地震”,“正平南海地震”といった名称が広く世間に認知されている地震の発生日の和暦を,嘉永7年10月5日,康安1年6月24日とすると西暦以上の誤解や混乱を招く恐れがあり難しいので,これも慎重に進めなければならない.
著者
山口 富子 福島 真人 橋本 敬 日比野 愛子 纐纈 一起 村上 道夫 鈴木 舞 秋吉 貴雄 綾部 広則 田原 敬一郎
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、現代社会にさまざまな影響を及ぼす「予測」という行為に焦点を当て、「予測をめぐる科学技術的実践の多様性とそれが政治あるいは社会に与える影響」、また「政治あるいは社会が予測という行為に与える影響」を明らかにすることを目標とする。その問いの答えを導き出すために、平成29年度は、地震、市場、感染症、食と農、犯罪など、諸分野に観察される「予測」の問題について、科学社会学、科学人類学、科学政策、社会心理学、地震学の立場から、個別の事例研究を推進した。事例研究を推進する過程においては、異なる分野で観察される諸現象についても理解を深めるために、科研メンバー間で事例研究の進捗状況を報告するとともに、関連する分野の専門的知識を持つ連携研究者やゲストスピーカを招き、予測と社会の問題についての理解に勉めた。「災害リスク・コミュニケーションの課題と展望」(京都大学防災研究所巨大災害研究センター、矢守克也氏)、「将来予測の方法論」(JAIST北陸先端科学技術大学院大学客員教授、奥和田久美氏)らが主だった話題提供者である。これまでの研究討議を通して、「予測科学」を社会科学的に理解するためには、予測ツールと人びとの行為の接続の問題、政策的ツールに包含される予測と社会の問題等が掘り下げるべき主要な論点である事が解り、平成30年度は、これらの論点を中心に議論を継続し、多様な事例を統合する方策を模索する。また、研究成果を研究者コミュニティーに還元するために、科学技術社会論学会年次大会において「予測をめぐる科学と社会」というタイトルのオーガナイズドセッションを行った事も主要な研究業績として挙げられる。セッションの取りまとめは、若手研究者である鈴木舞氏が行い、研究者育成にも配慮をした。学会での発表要旨、登壇者等については、本科研のホームページを通して日本語と英語で公表し、社会に向けて情報発信も行った。
著者
纐纈 一起 大木 聖子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.50-67, 2015-03-10 (Released:2023-09-11)
参考文献数
21

社会が災害科学に期待することは将来の自然災害の防止や軽減であり,そのためには自然災害を予測する必要があるが,種々の制約により予測が困難な場合が多いので,災害科学の社会貢献は不定性が高くなる.それを念頭に置かずに「踏み越え」が行われると科学者が刑事責任まで問われることがあり,イタリアのラクイラ地震裁判はその最近の例であるので,資料収集や聞き取り調査,判決理由書の分析等を行い,そこでの災害科学の不定性と科学者の責任を検討した.その結果,裁判の対象となったラクイラ地震の人的被害は,災害科学の不定性を踏まえない市民保護庁副長官の安易な「安全宣言」が主な原因という結論を得た.また,この「安全宣言」のみを報じた報道機関にも重大な責任がある.副長官以外の被告にも会合での発言が災害科学のコミュニケーションとして不用意であるという問題点が存在したが,地震までに発言が住民に伝わることはなかったから,この問題点は道義的責任に留まる.
著者
清水 洋 松本 聡 酒井 慎一 岡田 知己 渡辺 俊樹 飯尾 能久 相澤 広記 松島 健 高橋 浩晃 中尾 茂 鈴木 康弘 後藤 秀昭 大倉 敬宏 山本 希 中道 治久 山中 浩明 神野 達夫 三宅 弘恵 纐纈 一起 浅野 公之 松島 信一 福岡 浩 若井 明彦 大井 昌弘 田村 圭子 木村 玲欧 井ノ口 宗成 前原 喜彦 赤星 朋比古 宇津木 充 上嶋 誠 王 功輝 ハザリカ ヘマンタ 矢田 俊文 高橋 和雄
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2016年熊本地震について、地震活動や地殻変動、活断層、火山活動への影響、地震災害の特徴などを調査した。その結果、熊本地震は布田川・日奈久断層帯の右横ずれ運動によって発生したが、複数の断層面と複雑な断層形状を持つことを明らかにした。また、建物被害や土砂災害の地盤との関係、特に、地盤の過剰間隙水圧が地すべりの発生要因であることを明らかにした。さらに、災害情報や災害過程、被災救援、エコノミークラス症候群などについての調査から、広域複合災害の問題点と対応策を提示した。
著者
大堀 道広 纐纈 一起 南 忠夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.433-461, 1990-09-28

本論文は,不整形地盤の3次元問題について,解析手法を提案し,さらにこれを用いて堆積盆地の地震動特性の検討を行ったものである.まず, 2次元問題において不整形地盤を解析するための有力な手法と評価されているAL法を, 3次元問題への拡張するための定式化を行った.従来AL法による3次元解析では特に工学的に重要な平面S波入射の垂直入射問題を取り扱うことが困難とされていた.この問題を,ベクトル・ポテンシャルによる変位の表現式を工夫することにより解決した.そして,提案した解析手法の妥当性と作成したプログラムの信頼性を確認するために,他の手法により示されている軸対称堆積盆地についての解析結果と比較したところ,良い一致を示した.続いて,これまで取り扱われることの少なかった3次元地下構造を有する堆積盆地の地震動特性を,軸対称問題ばかりでなく,非軸対称問題についてもAL法による3次元解析を行い,得られた周波数応答および時刻歴応答を1次元解析および2次元解析による応答と比較検討した.その結果, 1次元解析よりも2次元解析, 2次元解析よりも3次元解析というように,解析する次元が高くなるにつれて,堆積盆地の地表動には,より短周期の波動が励起され,振幅もより大きくなり,継続時間もより長くなるという傾向が見られた.これは, 3次元的な地下構造が地震動に与える影響が非常に大きいことを示唆している.
著者
纐纈 一起 鷹野 澄 坪井 誠司 宮武 隆 阿部 勝征 萩原 幸男
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.517-532, 1990-03-30

地震予知計画の下で国立大学により運営されてきた地震予知観測情報ネットワークでは,各構成機関により維持・管理されている約160点の地震観測点の波形データが,全国7箇所の地域センター等に集められ,そこでそれぞれ独自に開発された自動処理システムにより,地震波到着時刻の読み取り・震源位置の決定などがリアルタイムで行なわれている.この処理結果はオンラインで地震研究所の地震予知観測情報センター(EPDCに転送され,リアルタイム地震データとしてデータベースに保存されている.EPDCではこのデータを統合し,TSSにより表示できるようにしたシステムを開発した.統合処理は2つのジョブが前処理と本処理を担当する.前処理ではデータを震源時順に並べ替えることと,震源時と震央座標が近い地震を同一地震と仮判定することが行なわれる.この結果がさらに本処理に送られ,親子法による同一地震の本判定と震源再決定が実行される.震源再決定で得られた統合処理結果は,ユーザのTSSごとに起動される検索プログラムで表示させることができる.1ヵ月間の処理結果を気象庁の震源速報と比較したところ,海の地震の深さが異なるのが目立つ程度で,マグニチュード3半ばより大きい地震はよく一致した.それより小さな地震では全般的に気象庁より検知能力が高いが,観測網が粗い中国・四国地方やまったく観測点がない九州地方は気象庁が優れている.本システムの今後の課題は,現在大きな地震のデータ統合を優先しているため,小さい地震の分離能力が弱い点を改善することである.また,現在情報不足で困難となっているマグニチュードの独自決定も課題であろう.
著者
菊地 正幸 山中 佳子 纐纈 一起
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.204-216, 2001
参考文献数
12
被引用文献数
1 21

A sudden collapse of the summit of Miyake-jima occurred on July 8, 2000, together with intermittent eruptions. This collapse generated long-period seismic waves with a dominant period of about 10s. Following this event, very long-period seismic pulses (VLP pulses) with a duration of about 50s were observed a few times a day until they ceased at the largest summit eruption on August 18. We analyzed these seismic pulses using waveform data recorded at several domestic stations for broadband seismographs and strong motion seismometers on Miyake-jima. The July 8 event is well characterized by a single-force directed initially upward and later downward during 12 sec. The single-force is interpreted as an abrupt collapse of massive rock. The total mass is estimated to be about 5 × 10<SUP>10</SUP> kg with fall of about 300 m. On the other hand, VLP pulses are modeled by moment-tensors with an isotropic component. They are located about 1 km southwest from the summit and 2 to 3 km deep. All three principal values are positive. The largest one is horizontal and the smallest one is near vertical. The total volume change due to 39 VLP pulses is 2.6× 10<SUP>8</SUP>m<SUP>3</SUP>, amounting to nearly one half of the total volume of the summit collapse. Based on theresults, we propose a buried geyser model. A large reservoir of hot water was formed just after the summit collapse on July 8. The ground water poured into the reservoir, being rapidly heated by hot rock underneath, and evaporated to form a highly pressurized steam, which pushed a lower conduit piston into the magma reservoir to generate VLP pulses. Non-isotropic expansion of the VLP pulses may be ascribed to the shape of the magma reservoir.
著者
纐纈 一起
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.165-176, 1991-09-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
23
被引用文献数
2

We present a new ‘bending’ formulation of three-dimensional ray tracing in a spherical Earth. This is suitable for computer programming, and we have already corrected some errors in previously published formulations. By using this formulation we calculate a seismic ray traveling in a velocity model for the subduction zone around the Japan islands. The result is compared with those by appoximate ray-tracing methods, such as Ray Initializer, Circular Ray Tracer and Pseudo-Bending. The model includes the Conrad and Moho discontinuities, and the upper boundary of the subducting Pacific plate. To evaluate the effect of the discontinuities we also calculate exact rays for continuous models derived from the Lagrange or spline interpolation of the discontinuous model. The comparison shows that appoximate ray-tracing methods and smoothed continuous models may lead detailed seismic tomography of the subduction zone to a wrong result. In particular, the discontinuities should be taken into calculations to obtain precise trajectories of rays traveling through a subducting slab.
著者
坪井 誠司 纐纈 一起 鷹野 澄 宮武 隆 阿部 勝征 萩原 幸男
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.277-284, 1989-09-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
14
被引用文献数
2

The Earthquake Prediction Data Center (EPDC) of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo, has been receiving the hypocentral parameters and arrival time data acquired through the University Information System for Earthquake Prediction Research, which is operated by Japanese national universities under the national program for earthquake prediction. Through the cooperation of these universities, the data and hypocenters were compiled and stored in the database system of the EPDC. There are two types of database; one is the real-time database and the other is the revised database which is sent by magnetic tapes from each regional center. EPDC has prepared to open these database for every seismologists to use and now the real-time database can be used by the real-time monitoring system and the revised database is open to be public as the Japan University Network Earthquake Catalog. The hypocentral coordinates and orgin times listed in the catalog are redetermined by EPDC using the arrival time data of the revised database. Although, the minimun magnitude of the earthquakes listed in the catalog is 2.0, the earthquakes listed in the catalog covers the microearthquake activities in Japan. In the present paper, we discuss the hypocenter determination procedure of the catalog and also the characteristics of the hypocenters listed in the catalog.
著者
纐纈 一起 鷹野 澄 坪井 誠司 宮武 隆 阿部 勝征 萩原 幸男
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.517-532, 1990-03-30

地震予知計画の下で国立大学により運営されてきた地震予知観測情報ネットワークでは,各構成機関により維持・管理されている約160点の地震観測点の波形データが,全国7箇所の地域センター等に集められ,そこでそれぞれ独自に開発された自動処理システムにより,地震波到着時刻の読み取り・震源位置の決定などがリアルタイムで行なわれている.この処理結果はオンラインで地震研究所の地震予知観測情報センター(EPDCに転送され,リアルタイム地震データとしてデータベースに保存されている.EPDCではこのデータを統合し,TSSにより表示できるようにしたシステムを開発した.統合処理は2つのジョブが前処理と本処理を担当する.前処理ではデータを震源時順に並べ替えることと,震源時と震央座標が近い地震を同一地震と仮判定することが行なわれる.この結果がさらに本処理に送られ,親子法による同一地震の本判定と震源再決定が実行される.震源再決定で得られた統合処理結果は,ユーザのTSSごとに起動される検索プログラムで表示させることができる.1ヵ月間の処理結果を気象庁の震源速報と比較したところ,海の地震の深さが異なるのが目立つ程度で,マグニチュード3半ばより大きい地震はよく一致した.それより小さな地震では全般的に気象庁より検知能力が高いが,観測網が粗い中国・四国地方やまったく観測点がない九州地方は気象庁が優れている.本システムの今後の課題は,現在大きな地震のデータ統合を優先しているため,小さい地震の分離能力が弱い点を改善することである.また,現在情報不足で困難となっているマグニチュードの独自決定も課題であろう.
著者
大堀 道広 纐纈 一起 南 忠夫
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.433-461, 1990-09-28

本論文は,不整形地盤の3次元問題について,解析手法を提案し,さらにこれを用いて堆積盆地の地震動特性の検討を行ったものである.まず, 2次元問題において不整形地盤を解析するための有力な手法と評価されているAL法を, 3次元問題への拡張するための定式化を行った.従来AL法による3次元解析では特に工学的に重要な平面S波入射の垂直入射問題を取り扱うことが困難とされていた.この問題を,ベクトル・ポテンシャルによる変位の表現式を工夫することにより解決した.そして,提案した解析手法の妥当性と作成したプログラムの信頼性を確認するために,他の手法により示されている軸対称堆積盆地についての解析結果と比較したところ,良い一致を示した.続いて,これまで取り扱われることの少なかった3次元地下構造を有する堆積盆地の地震動特性を,軸対称問題ばかりでなく,非軸対称問題についてもAL法による3次元解析を行い,得られた周波数応答および時刻歴応答を1次元解析および2次元解析による応答と比較検討した.その結果, 1次元解析よりも2次元解析, 2次元解析よりも3次元解析というように,解析する次元が高くなるにつれて,堆積盆地の地表動には,より短周期の波動が励起され,振幅もより大きくなり,継続時間もより長くなるという傾向が見られた.これは, 3次元的な地下構造が地震動に与える影響が非常に大きいことを示唆している.
著者
纐纈 一起
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.437, pp.1-18, 1991-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
134
被引用文献数
2 2
著者
古村 孝志 纐纈 一起 坂上 実 山中 佳子 高橋 正義
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.299-308, 2001-09-20 (Released:2010-03-11)
参考文献数
12

Seismic intensity at Shikine-jima during the earthquake swarm of Izu-Islands in 2000 is usually one or two ranks higher than that at neighbor island, though epicentral distances to these islands are almost similar. In order to investigate the cause of anomalous large seismic intensity, three portable strong motion instruments have been installed at the island.The spectral ratios of observed S waveforms at sedimentary stations at Shikine-jima demonstrate severe site amplification of 2 to 10 within a wide frequency range between 1 to 10Hz relative to rock site. The experiments based on a GA inversion indicate unusual subsurface structure with very low (VS=31-427m/s) and high attenuation (QS=15-148) superficial layer overlying a bedrock (VS=1000m/s, QS=200) with large contrast at the interface is a main cause of high seismic intensities.The influence of nonlinearity was also found near a coast of Shikine-jima when the ground acceleration level exceeds 300cm/s2. The nonlinear ground response yielded a considerable reduction of the ground motions, so that the observed peak accelerations during the severe earthquakes were only about 50% of that predicted by linear ground response.
著者
纐纈 一起
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.325-331, 1989-09-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Some techniques used in statistics, such as the variable change method, the penalty function method and the gradient projection method, are introduced to determine the location of a hypocenter with a definitely non-negative depth. Numerical simulations are carried out to compare the efficiency of them by using synthetic arrival time data for a four-station seismic array. They demonstrate that the penalty function method with a proper weight is the most efficient. However, if we take an improper weight, it may lead to a negative depth or an invalid solution. Since the variable change method and the gradient projection method do not have such arbitrariness, those can be implemented more easily into hypocenter determination processes operated routinely. The demonstration with real arrival time data shows that the variable change method as z=h2 has practical efficiency.
著者
纐纈 一起 竹中 博士
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.391-403, 1989-09-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
96
被引用文献数
1 4

We review recent theoretical studies on wave propagation in the near field of seismic sources. These include theories for horizontally layered media as well as those for irregularly layered media. Ray theory and its extensions are easily applied to arbitrarily inhomogeneous media, but they include serious approximations. The finite difference method is also flexible, but requires extensive computation. Except for these methods, we should note that all the methods currently available for irregularly layered media belong to the category of the method of weighted residuals.
著者
境 有紀 纐纈 一起 神野 達夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.67, no.555, pp.85-91, 2002
被引用文献数
12 22

We investigated earthquakes in Japan, where strong ground motion records coincided with building damage data, examining correlation between various indices of seismic destructive power and building damage ratios. We also carried out earhtquake response analyses and calculated responses to one-cycle sine-wave inputs. We proposed the average elastic acceleration or velocity response at periods from 1.2 to 1.5 s with a damping factor of 0.05 as an optimum destructive power index of strong ground motion for predicting building damage ratios. The period range is based on the equivalent periods that are calculated for residences with typical elastic periods considering inelastic elongation. We then formulated the vulnerability function using this proposed index and modified the JMA seismic intensity scale for obtaining better correlation with actual building damage.