- 著者
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塙 武郎
- 出版者
- 東京大学社会科学研究所
- 雑誌
- 社會科學研究 (ISSN:03873307)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.5/6, pp.163-184, 2008-03-21
本稿は,ニューヨーク市(以下,市教育局)を事例としてアメリカの初等中等教育の財政構造と特質について「州・地方財政」の視点から検討する.初等中等教育行政に専門特化する学校区は,財政面で州から独立性をもつ地方政府であり,地方財産税の自主管理により教育費を賄っている.市教育局の場合,市の行政組織の一部であるため,教員給与や学校施設費等の経常的経費(一般基金)だけを主に管理し,その一般基金には市の自主財源と州運営費交付金(Flex Aid)が投入されている.州運営費交付金は,学校区の「財政力指数」(CWR)を用いて算定・配分され学校区間の所得再分配を担っている.教育財政の特質を象徴する同補助金は,第1に財源格差の「平準化」ではなく,「縮小」を目的とし,第2に貧困学校区には手厚いが,富裕学校区にも少額ながら配分することによって州・地方政府間の公平なパートナーシップを図り,第3に富裕学校区から余剰財源を削ぎ取って貧困学校区に分配するものではないと論じる.