著者
牧野 篤
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.123-137, 2010-03-30

長引く不況にあって,日本社会は雇用劣化とでも呼べるような状況を呈している。それはいわゆる日本型雇用慣行の解体によってもたらされたものである。しかし,その背景にはストックを基本とする社会経済のあり方からフローを基本とするそれへの,構造的な転換が存在している。このような社会状況の中にあって,単に就労のための教育や訓練を提唱することは,繰り返し使い棄てられる商品としての人材を養成することでしかない。問われているのは,以下の諸点である。(1)正規・非正規という区別を無用化するような雇用の構造をつくりだすこと。(2)社会の中で,他者との関わりにおいて自分の存在を意味づけることのできる力を個々人が獲得するための学習プログラムを人々に提供し,彼らに対する継続的な支援を続けていくこと。(3)そのために生涯学習そのものを「働くこと」を問うことによって,社会を生成的に再構成するものとして再定義すること。本稿では,その枠組みを人々が社会の中に位置づいている自分を認識することとして,基本的課題を考察する。

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