- 著者
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柾木 貴之
- 出版者
- 東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻
- 雑誌
- 言語情報科学 (ISSN:13478931)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.151-167, 2011-03-01
これまでの研究によると、「国語教育と英語教育の連携」に関する初のまとまった研究は、西尾実・石橋幸太郎監修(1967)『言語教育学叢書』第一期・全6巻(文化評論出版)であった。これは当時の国語教育・英語教育の第一人者による共著であり、「相補的関係における国語教育と外国語教育」を理念として打ち出した重要な書である。にも関わらず、同書刊行の背景に関する考察はほとんどなされてこなかった。今回、その背景として第一に、「国際時代」の到来が意識される中、「話しことば」の問題が存在したことがわかった。また第二に、「教科教育学」の問題が関係していることも判明した。特に、英語教育学の樹立に関する論文で同書はくり返し言及されている。そこから、同書は「すでに成立していた国語教育学との『相補的関係』を謳うことで、英語教育の学としての立場を保障しようとした書」と位置づけることができる。それは事実上、英文学・英語学からの「学的独立宣言」であった。