著者
酒井 智宏
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.35, no.TULIP, pp.277-296, 2014-09-30

この論文の目的は、メンタル・スペース理論が、表面上は認知言語学の理論の一つであるとされながら、実際には認知言語学者によって敬遠され、認知言語学の概説においても取りあげられることが少ない原因を明らかにすることである。メンタル・スペース理論の主たる研究対象は、自然言語そのものではなく、自然言語を手がかりにして作り出される認知的構築物である。この認知的構築物の構成要素であるメンタル・スペースは、定義が不明確で、明確に定義しようとすればするほど明確な定義から遠ざかるというジレンマを抱えている。また、この認知的構築物がもつとされる性質や制約は、実はわれわれの自然言語に関する理解を密輸入したものであり、独立の根拠によって正当化されたものではない。これらの点で、メンタル・スペース理論の枠組みでの研究は、言語現象をよりよく理解されている認知過程によって直観的に分かりやすいやり方で説明するという標準的な認知言語学の研究手法とは大きくかけ離れている。これが、メンタル・スペース理論が認知言語学者によって敬遠される原因にほかならない。

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@KonumaShuntaro メンタルスペースという装置を提唱した言語学者ですね。 言葉の意味についての議論がぐちゃぐちゃしてきたからもう図示しようぜ!という問題意識ですかね。 ご興味があればこの辺を読むとわかりやすいかもです。 https://t.co/yHWsjQI9zd https://t.co/ZkHLO38Qkw https://t.co/41OLya6gDh

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