著者
KASAI Junichi KASAI Tsukasa
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:24360627)
巻号頁・発行日
no.43, pp.133-147, 2022-03-31

本稿は、阪口祐三郎(一八八四~一九六一)が残した「大和屋技芸学校」の稽古帳を翻刻・紹介するものである。祐三郎は大阪市南区(現中央区)の芸妓扱店(置屋)大和屋の経営者であったが、明治四三年(一九一〇)、妻のきみと共に五年制の「大和屋芸妓養成所」を設立し、武原はん他の優れた芸妓を育てた。大和屋が属した大阪南地五花街では、すでに明治三〇年に芸妓の技能試験を始めていたが、祐三郎の企画は花街の近代化を一層推進するものであった。 「大和屋技芸学校」は大阪府の認可を受け、戦前の衣鉢を継いで昭和二五年(一九五〇)から生徒を募集した。この「稽古帳」は戦後の芸妓教育の実情を示すだけでなく、戦前期「大和屋芸妓養成所」のそれを髣髴させるが、芸妓教育のカリキュラムとして他に類を見ない貴重な史料である。現所蔵者・阪口純久氏(祐三郎長女)の許可を得て、ここに公開する。

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