著者
平野 拓朗
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.13-25, 2009-12-20

本研究の目的は,教師および生徒たちの学級への参加を捉えるために,ディレンマを被る観察者の立場を提示し,検討することである.本研究では,学習が,実践共同体(community ofpractice)への参加のプロセスとして捉えられるとする状況的学習論,とりわけレイヴとウェンガーによって提唱された「正統的周辺参加」(Legitimate Peripheral Participation : LPP)論を基軸として,学級への参加が,そこで期待される「成員性」(membership)を身につけていくプロセスと関連していることに注目した.さらに,LPP理論を踏まえ,学級において,その「成員性」を引き受けるさいの当事者の経験を,そこで「期待される成員像」(所定の参照枠)から記述するのではなく,それに関与しながらも,疑問を感じずにはいないディレンマを被る観察者の立場から捉える必要を示唆し,検討した.その結果,1)学級における「期待される成員像」が,教師や生徒たち,ボランティアなどの意図や願いにおいて合意されているため,外部者の「批判」においては変容するこのない強固さを持っていること,2)学級への参加が,「期待される成員像」には回収されないかかわりをも生じさせること,3)参与観察者のディレンマに注目することで,そのかかわりを「見る」ことが可能であることが明らかとなった.

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@ken_ini 京大の「紅」で昨日読んだ教育学ないし教育心理学の論文がこれ。中学校のクラスでぼっちになっていた身障者の三木君。でも藤原さんという女の子が気さくに三木君に話しかけてくれて、参与観察していた著者は感動したよというお話。http://t.co/whDPkJm05j

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