著者
亀田 俊和
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.517-548, 2006-07-01

恩賞充行政策は、将軍の主従制的支配権の根幹で、かつ、南北朝初期室町幕府の最も重要な政策課題であり、恩賞充行の将軍下文には、執事施行状が付されて恩賞の実現に大いに貢献した。本稿では、執事施行状の発給機関が、室町幕府追加法第七条等の検討によって仁政方であることを論証し、併せて仁政方が、南北朝全期にわたって施行状を含む執事奉書一般を発給する、将軍管轄下の執事の機関である事実を考証した。 また、追加七条は、足利直義が執事施行状の発給を停止し、自己の管轄機関である引付方で下文の執行を行うことを定めた法令であり、ここに直義と執事高師直の対立が窺え、さらにこの抗争の根底には、恩賞充行の実現をめぐって、鎌倉幕府以来の伝統的な評定―引付体制を堅持するか、守護に遵行を命じる下文施行システムを発展させて、将来的に管領制度を確立させるかといった幕府内部の政策対立が存在したことを論じた。

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