著者
本庄 総子
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.7-40, 2020-01-31

マクニール・モデルとは、集団間に支配・被支配が成立する背景を、疫病への免疫力格差によって説明する理論型である。本稿では、この理論を踏まえつつ、日本古代における疫病の構造的理解を目指す。日本古代の疫病には大きく分けて二つのタイプがある。一つは、国外からの伝播ではないかと推定される大宰府発生の疫病である。このタイプは、非常に高い致死性をもつが、発生は稀である。もう一つは、京から伝播するタイプの疫病で、比較的致死性は低いが、頻繁に発生し、京から徒歩一〇日圏内からやや西に偏る範囲に伝播する。両タイプとも、飢饉の結果として発生するだけでなく、さらなる飢饉の誘因ともなった。奈良時代以前の疫病は、大きな被害を被った場合でも、一定期間内に復興が見込めたが、平安時代の最初期、復興に遅延が生じるようになった結果、疫癘間発という疫病の連鎖が発生し、律令国家の掌握する人口と田地に大きな損害を与えた。

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"飢饉が大きな誘因となる。疫病が蔓延し、病人が増加すると、田地が荒廃し、次なる飢饉が引き起こされるという悪循環""律令国家の極端な農本主義は、この悪循環をより深刻化させる構造的障害" →面白い

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