著者
木村 晴壽
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
教育総合研究 = Research and Studies in Education (ISSN:24336114)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-28, 2018-11-30

本論は、明治初期に開始された地方制度改革の過程で信州に設置された筑摩県を素材に、その教育行政のあり方を仔細に検討した。筑摩県は地方行政区として4年余り存続しただけの県ではあったが、その教育行政は独特であり、短期間に着々と小学校の設立が進んだだけでなく、学制施行直後の当時としては驚異的な高就学率をも達成した。これらの実績を評価した文部省は、官民ともに県全体が学制の主旨に沿った教育の充実を実現しているとして、筑摩県を賞賛した。迅速な学校設置や高就学率を実現するため筑摩県では、後に県の一部となる伊那県の時代から県の長官を務める人物が先頭に立って教育行政を牽引し、精勤賞や不就学補助金等の実効性ある施策を実施していた。さらには、長官である権令自ら県内の小学校を巡回して就学を督励するなど、むしろ特異ともいえる姿勢で教育行政と取り組んでいた。その最中、地方統治の完成を目指す政府が断行した府県統合策によって筑摩県は、発足から4年余りで旧長野県と統合された。筑摩県が消滅した後、統合長野県の教育行政からは、徐々に筑摩県色が失われていったが、就学率を含めた教育水準は、それなりに維持された。

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