- 著者
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奥中 康人
オクナカ ヤスト
- 雑誌
- 静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture Bulletin
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.225-241, 2021-03-31
本稿は、国立公文書館アジア歴史資料センターのデジタルアーカイブを用いて、西南戦争(明治十年)に関係する陸軍のラッパ信号の用い方を分析することを目的としている。同アーカイブを「喇叭」等のキーワードで検索し、抽出された約三二〇件のデータは、楽器としてのラッパについて、ラッパ手について、ラッパ信号についてのデータに分類することができる。とくにラッパ信号を中心に分析を進めると、数多くのフランスのラッパ信号が用いられたこと、戦争が終盤となった九月になってから数曲のマーチを練習していたことが明らかになっただけでなく、「喇叭暗号」という特殊な用法が存在したことがわかった。 ラッパ暗号とは、あらかじめ定められたラッパ信号を問答形式で交わすことによって敵・味方を識別する用法である。しかしながら、資料から読み取れるのは、ラッパ暗号が記載された手帳や文書が敵の手に渡り、何度も改正を余儀なくされたという失態である。ラッパ暗号の運用には問題はあったものの、総じてラッパ手たちは数多くのラッパ信号を吹奏していたようであり、それまでのラッパ教育が順調であったことがうかがえる。