著者
田中 薫 Kaoru TANAKA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.145-164, 1999-03-20

平成9年度1年間の日本の書籍の総新刊発行点数は6万2,336点であった。この数字を約1億2,500万人という総人口に対して、「多い」と考えるか「少ない」と考えるかは何とも言えない。しかし、膨大な量であることは否定できない。現代はそれほどおびただしい数の書籍が出版されている時代なのである。またそうした現実が成立するのは、出版物の流通機構がきちんと確立されているおかげである。そして、学術書や実用書などは別にして、虚構の世界であっても、小説等の出版物をフィクションであることを承知の上で、「娯楽」として楽しんでいるうちは問題がない。しかし、虚構であるにもかかわらず、あたかもそれが真実であるかの如くに書物にして発表する人たちがいる。つまり歴史や科学を堂々と捏造する人たちが存在しているのである。それらの作品の一部を「偽書」と言っている。現在、わが国では「言論・出版・表現の自由」が保障されている。だが、それを逆手にとったような、「偽書」あるいは「トンデモ本」の出版があとを絶たない。そしてそれがまた別の多くの新たな問題を引き起こす。しかしそれが可能であることが「出版」というメディアの持つ一つの特徴とも言える。そこでその問題に「偽書問題」と名付けてその是非について論じてみたい。

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【資料】MMUに、田中薫氏の論考「「偽書問題」の存在」(宮崎公立大学人文学部紀要6 1999/3/20)がpdfで公開されています。興味のある方はぜひ https://t.co/2XOkIi4779

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